先日、ひょんなことからある方に六本木のクラブに連れていっていただいた。
その日は、夕方から神奈川県内で打ち合わせをしていたのだが、遅くなったので彼をクルマで送っていくことにした。
途中、夜も9時を過ぎていたのだが「飯でも食おうか」ということになり、六本木でお腹を満たすことにした。
食事中、彼の携帯電話に何度かメールが入った。
六本木にある高級クラブのホステスさんからである。
その日はホステスさんの誕生日で、要は営業のメールだった。

結局、「顔だけ出しに行こうか」といことで、男3人、クラブの扉を開けた次第。

店内に入るとなんと満席状態。いきなり驚かされた。
というのも、その日は月曜の夜だったからである。
傍らについた女性に「いつもこんなに混んでいるのか」と聞いてみると、
「今日は、うちのNo.1の娘の誕生日なんですよ」という答えが返ってきた。
つまりメールの主は、お店のNo.1ホステスさんだったのである。

その彼女は、忙しそうに各テーブルをまわり、あちこちでシャンペンを抜いて乾杯をしている。
なんだか、お店の中だけを見ていると、不景気といわれる今の世相が信じられないような光景だ。
まぁ、それだけNo.1ホステスさんの実力が凄いということなのだろう。
なにしろ、月曜の夜にもかかわらず系列店から応援のホステスさんが来ているほどなのだから。

そのNo.1の彼女。
一体、どれほどの女性なのかといえば、意外にも、どこにでもいそうなちょっと可愛い普通の女性。
正直、「あれがNo.1か・・・」というのが率直な印象だった。
彼女がなぜNo.1なのか? 疑問に思った。
なぜなら、お店には女性としてもっと魅力的な人はほかにもいる。
そんな疑問を持ちつつ、彼女とは一言も話しをすることなく、一足先においとますることにした。

帰り際、その彼女は見送りに出てきてくれた。
3階から1階に向かうエレベーターの中ではじめて言葉を交わしたのだが、彼女は強い印象を残していった。
わずか1分にも満たないたわいもない会話だったが、何とも居心地の良い不思議な瞬間だったのである。
さすがはNo.1。その実力に恐れ入った次第である。

帰りの道すがら考えてみると、(もう一度、あの人と話をしてみたい)と思わせる何かが彼女にはあるのだ。
お店には、彼女よりも綺麗な女性、スタイルの素晴らしい女性、むせかえるような色香を放つ女性は数多くいた。
だが、No.1の彼女を形容する適当な日本語は見当たらない。
その何かが彼女をNo.1にしているのだ。

ところで、クラブを自動車ディーラーに置き換えると、売っているクルマはホステスさんに相当する。
クルマはわずか15分から20分の試乗の中でお客を魅了しなければならない。
ディーラーからの帰り道、
「あー、あのクルマにもう一度乗りたい」あるいは「あのクルマが欲しい」
とお客に思わせる何かがあれば、そのクルマはNo.1になるのではないだろうか。
その何かは、スタイルでもなければ、性能でも、装備でも、造りの良さでもない。
カタログの文字に表現できない魅力なのである。

それを知るためにも、自動車メーカーで開発をしている、あるいは商品企画をしている方々は、
堂々と一流のクラブ活動をするべきだと思った。

結局、Clubメルセデスや倶楽部ポルシェには実力派のホステスさんが揃っているということなのであろう。
ただ、高級すぎて我々庶民には立ち入りにくいのが現実。
そして、六本木のクラブもまた、私には通い詰めることができない世界なのだ。