大きくなったとデビュー時は不評だったR33GT-R。しかし、その走りの性能は完全にR32GT-Rを凌駕。
日本にはGT-Rというスーパーカーがあると欧州に知らしめ、イギリスに100台限定ながら正式に輸出された。
4ドア版を復活させ、ストイックなまでに走行性能の進化を求めたその歴史を振り返る。


Photo: ARGOS / Motor Magazine / NISSAN
Text: Katsuhide Sugino
Special Thanks: GTROC / R's Owners Paddock
By courtesy of GT-R BROS, Motor Magazine, 1999.




さらに高まる走りへの要求に応え続け、後期型でリヤサスの取り付け部を補強する。

 1995年1月6日。R33GT-Rは、東京・晴海の東京オートサロンの会場で発表された。新型車が、こういう場所でお披露目されるということは異例のことである。
 R33GT-Rは、R32GT-Rで指摘された欠点をことごとく改良するということに開発の重点が置かれた。一方、他の車種との部品の共有化を一層推進したことで、ホイールベースが105mm延長され全長も130mm伸び、数値以上に大きく見えるようになった。
 より速く走るということと、大型化したボディ。この相反する難問をクリアするため、ニュルブルクリンクでのテストが積極的に行われた。結果、ボディは徹底的に補強され、剛性は大幅に向上。R32GT-Rより格段にアンダーステアが軽減され、曲がるGT-Rとなってデビューした。


バッテリーをリヤシート後方に移したハイトラクションレイアウトを採用。前後ストラットバーを標準装備にするなど車体剛性とハンドリングを向上。ブーストアップにより最大トルクが1.5kgm太くなっている。
 ラインナップは、GT-RとGT-R Vスペックの2タイプ。いわゆる標準車のGT-Rが、ブレンボの大径ブレーキを標準装備し、R32GT-RのVスペックに相当する内容を持つ「作るべきGT-R」という位置付け。
 新しくアクティブLSDをリヤに組み込み、電子制御トルクスプリット4WDシステムのチューニングを専用に施した「アテーサE-TS PRO」を搭載したVスペックは、技術者が「本当に作りたかった走りを極めるGT-R」として登場した。
 翌1996年2月には、早くも小変更を受ける。それまで運転席のみが標準装備だったSRSエアバッグが、運転席、助手席ともに標準装備のデュアルエアバッグになったのだ。本革巻きながらマーチと同じデザインだと不評だったステアリングが、スマートになった。同時に、インパネのデザインが変更になり、材質も変わっている。
 外観の変更は、非常にマニアック。リヤのガーニッシュが、前期型がフラットな面にSKYLINEの浮き出し文字だったのに対し、曲面のガーニッシュに変更されているのみなのだ。さらに細かいところでいうと、ABSのホイール回転センサーのハーネスが細いものに変更されていたりもする。


R32GT-RのVスペックに装着して好評だったブレンボのブレーキシステムを全車に標準装備。1996年5月にはN1耐久レース対策の1サイズ大きなキャリパーと2ピース大径ローターが、JAF登録車両仕様変更部品としてニスモ扱いで設定されている。
 5月21日には、7月末までの期間限定で、ル・マン24時間レース参戦記念車としてGT-R初の特別仕様車「LMリミテッド」が発売された。このクルマは、専用の車体色「チャンピオンブルー」を採用し、N1ベース仕様と同じエアインテークダクト付きバンパー、フードトップモール、カーボンセンターリヤスポイラーを装着したもの。標準車にも、Vスペックにも設定されていた。カーボンセンターリヤスポイラーだけをオプションで装備することを考えると、お得な価格設定になっていた。約2ヶ月間に売られた台数は、わずか98台といわれている。
 1997年2月には、本格的なマイナーチェンジを受ける。ヘッドライトにプロジェクタータイプのキセノンヘッドライトを採用。さらに、フロントスポイラーを大型化し、下端を20mm延長。従来のフロントスポイラーもオプションで設定している。フロントバンパーは全車、N1ベース仕様と同じエアインテークを追加した。
 また、右側のバックランプをリヤフォグランプに変更。フロントのドアガラスにロングライフ撥水ガラスを採用。


前期型のステアリングはGT-Rというスポーツを極めるクルマにはどうしても馴染まないデザインだった。デビュー1年後の中期型から、やっとスリムでスポーティなデザインに変更された。
 R32型では実施されなかった、外観の小さくない変更が行われたのだ。ただ、一般のクルマのグリルやテールランプのデザイン変更するマイナーチェンジとは違い、これらの変更は走行性能と安全性の向上のために行われたもの。
 そして、外観から見えないところでもっとも大きな変更が加わっていた。リヤサスペンションメンバーの取り付け部にリヤフロアステーを追加し、車体剛性を高め、操縦安定性の向上を図ったのだ。
 また、ABSのアクチュエーターを小型化し、軽量化するとともに制御のチューニングを行い、旋回制動時の安定性を高めている。
 1997年秋には、GT-Rと同じエンジンと駆動系を持つステージア・オーテックバージョン260RSが登場。
 そして1997年12月8日、かねてから登場のうわさがあった、4ドアGT-R、「スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」が発表になった。


R32にもオーテック・ジャパンでGTS-4をベースにボディを改造、ワイド化した4ドアGT-Rが存在したが、このR33の4ドアGT-Rは同じオーテック製でもラインで新車として製造されたものだ。
 このクルマは、セダンのGTS-4にRB26DETTを搭載しただけのお手軽クルマではない。2ドアGT-Rのフロアを使い、その上に4ドアのボディを架装したもの。GT-Rのボディを4ドアで再現するため、リヤフェンダーやドアの専用部品を新たに製作し、ワイド化していることも話題になった。機械式LSDなど駆動系は、GT-R標準車と同じ。
 登場時には、大きくなったボディが不評だったR33GT-R。総生産台数は、R32GT-Rよりはるかに少ない、1万6520台だった。中古車市場では、R32GT-Rの大幅な価格下落とは対照的に、落ち幅が少ないという。将来的には貴重なクルマになるのかもしれない。





ABSのアクチュエーターユニットは、前期/中期型と、後期型では、形状が異なる。後期型のユニットは、より小型軽量化され、制御ロジックも旋回制動で安定するように変更されている。





前期型のセンターコンソールは、CDを立てて入れられる深さがあった。しかし、1996年1月の仕様変更後の中期型からはなぜかコンソールが浅くなっている。見かけの形状は変化していない。





Vスペックには、アクティブLSDを搭載。前後の駆動力を最適制御するアテーサE-TSとこのアクティブLSD、そしてABSを組み合わせあらゆる路面でのトラクション性能、舵の効き、安定性、制動性能を高次元で実現。デフカバーはフィン付き。
標準車にはR32GT-Rと同じ湿式多板クラッチの機械式LSDを標準装備。デフカバーはフィンがないタイプ。4輪操舵のスーパーHICASは、ヨーレイトフィードバックの電動スーパーHICASに進化。デフの後ろの黒い筒状のものがモーターだ。