NISMO再始動!『R35 GT-Rに込めた狙い』 第1回

GT-Rと言えばニスモ。
これまでは、GT-Rのデビューと同時にニスモパーツがラインナップされるのが常だった。エアロやサスペンション、マフラーやブレーキなど一通りのパーツが新車の発表と同時にデリバリーされたものだった。当然、R35 GT-Rについても同様の動きかと思いきや、何故か今回に関しては沈黙を守り続けていた。
だが、そのニスモがようやく動きだした。
水面下で進行していたプロジェクトは、日産との強力なタッグのもとに今までにないカタチで進められていたのである。その内容は、ニスモのリリースにある通り。驚きの「NISMO クラブスポーツパッケージ」に込められたニスモの狙いとは何か?
プロジェクトを統括する田中利和に聞いた。

NISMO:NISSAN GT-R用「NISMOクラブスポーツパッケージ」発売

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net / NISMO



新たな領域への第一歩

水野和敏CVE



フェアレディZ バージョンNISMO TYPE 380RS


ニスモ商品の企画をスタートさせるため、最初にR35 GT-Rの開発責任者である日産自動車の水野CVEを尋ねたのは約2年前になります。プロトタイプを前に水野CVEから直接お話を伺い、今までの日産自動車のクルマ造りの常識を覆したクルマであるという事が強く伝わってきました。これはニスモの商品も今までと同じアプローチで進めていっても対応できないと直感しました。話を進めるにあたり、水野CVEから「俺はGT-Rの展開をこういう風に考えているからニスモはこの領域を担当したらどうか」と具体的な提案をいただきました。すなわちR35GT-Rの商品展開の一部をニスモが担当するという事でした。かねてより、お客さまのニスモの商品に対する希望とか期待感というものを調査しておりましたが、その中で確信していたことは、第一に「安心感」、そして第二に「チューニングショプにはできないことをやって欲しい」ということでした。もちろん、以前から「安心感」を重視してやってきましたが、この二つの期待感をより高いレベルで実現させるには、日産自動車の開発部隊とのパートナーシップがこれまで以上に必要であり、そして生まれた商品は絶対的な「安心感」を手に入れることができるとの結論に達したのです。
こうしてGT-Rに関する戦略が、我々なりに見えてきたので、今までにない領域に踏み出したわけです。
ニスモが日産自動車の協力を得て商品を開発したケースは過去にも多く例がありますが、企画・開発について今回ほど踏み込んだケースは昨年コンプリートカーとして発売した「フェアレディZ バージョンNISMO TYPE 380RS」以上です。そういう意味では、今回のNISMOクラブスポーツパッケージは、コンプリートカーという形態ではないのですが、非常に近いものになります。その一つのメリットが日産自動車の定めた新車保証が継続できるという点です。

絶対の安心感、他ではできないモノ、そして価値の創造


こうしてスタートしたNISMO商品の開発業務は、水野CVEをリーダーとするR35 GT-Rの開発チームにニスモの開発チームが完全に一体化して行われ、基準車の開発等と並行して進められました。
水野CVEが当初からうたっていた「GT-Rは毎年進化する」という基準車の開発と同化して進められました。そのため何度も仕様を見直す作業が繰り返され、やっと水野CVE、ニスモの開発スタッフ、開発ドライバーを努めた影山正美選手も納得できる確かな性能と、純正品と同等の品質を確保することが出来たのです。

実は、今回の商品には、性能・品質に関わる安心感のほかに、価値というもう一つの安心感を取り込みました。それは、新車保証が継続可能というメリットのほかに、3年後の付加価値も商品性として取り込んだ点にあります。つまり、このパッケージ装着車のリセールバリューなんです。通常のアフターマーケット商品を装着したらリセールバリューは下がるものですが、今回のGT-R商品は、この点においても今までの商品とは一線を画しているのです。この点においても、新たな領域への挑戦なんです。






単なる商品ではなく、サービスパッケージ
今回のNISMOクラブスポーツパッケージの特徴は、取付け・セットアップまで含む点にあります。単に、商品を販売して終わるものではありません。今までのニスモの商品で言えば、大森ファクトリーで行っていたエンジンチューニングメニューに近いイメージです。
ここでも重要なのが、お客様への安心感の提供。そのためには、個々のメカニックの技術レベルを始め、お店や工場の環境も重要な要素となります。エンジンを例に挙げれば、クルマを整備しているリフトの脇で組むのと、きちんとしたクリーンルームで組むのとでは、おのずと仕上がりに差が出てくるはずですよね。今回は、そういう視点も考慮してパートナーとなるショップのネットワーク造りも行いました。そこで、既に機材や設備が導入されているNHPC(日産ハイパフォーマンスセンター)店を中心に、NISMOエキスパートショップ網の再編を行ったわけです。大森ファクトリーだけでは、全国のGT-Rオーナーへのサービスは、さすがに無理ですからね(笑)。

NISMO:NISMOショップ体系をリニューアル

田中利和
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 
取締役ユーザーサポート企画部
1988年入社。根っからのクルマ好き。過去には初代GT-R(KPGC10)、R32 GT-Rなども所有するGT-Rフリークでもある。R34 GT-Rをベースとしたニスモコンプリートカー「Z-tune」も田中の企画。