NISMO再始動!『R35 GT-Rに込めた狙い』 第2回


NISMO大森ファクトリーでのテクニカルマスター研修風景。


水野CVE自らがGT-Rメンテナンスのノウハウを伝授する。


十勝24時間レースでのMOTUL NISMO GT-Rのピット作業。


NISMOは大森ファクトリーのメカニックを中心にチームを構成。

「絶対的な安心感」を武器に、新たな領域に一歩踏み出したニスモ。
NISMO クラブスポーツパッケージは、単なる商品ではなく、サービスを含めたパッケージだ。そのために、NISMOエキスパートショップ網を新たに再編するなど、今までとは異なる動きをみせている。
ニスモが描く未来像とは何か?
前回に引き続き、田中利和に聞いた。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net / NISMO



ヒト造りもテーマ
こうして選ばれたNHPC店に所属するGT-R認定T/S(テクニカルスタッフ)に対しては、更にニスモ独自の研修プログラムを受けてもらっています。
我々の研修プログラムでは、商品知識はもちろんのこと、サーキット走行をするための独自のセットアップ手順や、ブレーキやタイヤなどの消耗品類の使用限界など、実車を前に座学として行っています。もちろん、それだけでは不十分なので、実際に仙台ハイランドでテスト車を走らせOJT訓練も実施しているのです。この研修プログラムには、R35GT-Rの開発責任者である水野CVEにもきていただき、開発過程で得られた様々なノウハウを直接伝授してもらっているのです。
この研修プログラムを受けたメカニックのみが「NISMO・テクニカルマスター」としてクラブスポーツパッケージを装着したクルマのメンテナンスやセットアップを行います。今後も、我々のパーツは、NISMOテクニカルマスターのみが作業を行うことができ、必ず1店舗に1名以上が常駐することになっているんですよ。今回のGT-Rパーツの展開にあたっては、「ヒト造り」も重要なキーワードとなっています。

7月に参戦した十勝24時間レース。開発したモノの耐久性確認という目的もありましたが、「ヒト造り」という目的もありました。したがって、大森ファクトリーのスタッフを中心にチームを構成したわけです。まずは、エキスパートショップ網の中心となる大森の人材育成ですよね。こうした活動で得られたノウハウは、他のエキスパートショップにもフィードバックしていく予定です。
話は少しそれますが、水野CVEと私の最初の出会いは’95年のル・マン24HレースにNISMO GT-R LM(R33GT-R)で参戦した時です。当時はチーム監督とチームマネージャーという関係でしたが、こうした経験も今回のプロジェクトには非常に役に立ちました。
まだ、スタートしたばかりの試みですが、日々、メカニックやショップ自体のスキルは進化させていく予定です。将来は、ショップを主体にした走行会やドライビングレッスンも開催したいと思っています。そうすることによって、各ショップにはどんどんノウハウが蓄積されていくはずですし、お客様とのコミュニケーションも深まるはずです。
結局、お客様が感じる安心感というのは、信頼できる「ヒト」とのコミュニケーションによって得られるものなんです。

サーキットを楽しむために
クルマのチューニングというのは、まずノーマルで走り込んで、それからあーしたい、こーしたいというのが、本来あるべきステップと思うんです。
今までのアフターの世界は、まず、クルマを造ってしまう。これは、おかしいですよね。
僕らの狙いは、本来あるべきステップでクルマを楽しむ世界を提供していくこと。そういった意味でも、今後はGT-Rだけでなく、いろいろなクルマをそのクルマのキャラクターにあったパーツとして開発していきたいと思っています。現に、僕も第二世代のGT-Rは大好きです。だから、第二世代GT-R向けのパーツも開発していくつもりです。ただし、今回の新型GT-R用のパーツとは違ったアプローチになると思う。それぞれの世代には、それぞれの楽しみ方があるはずですから。そもそも、違う世代のGT-Rを同じ土俵で比較することが間違っていると思うんです。

ただ、キーワードはサーキットを楽しむこと。これは変わらない。
ニスモはGT-Rとともに歩んできた会社だけに、これからもGT-Rにはこだわっていきたいですね。

海外についても、将来的には国内と同じような考え方でトライしたいと考えています。
我々の、試みは今回で終わりではないのです。

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8月29日に、ニスモが発表した「NISMO クラブスポーツパッケージ」。総額は546万円というこれまでにない価格に驚いた方も多いはずだ。過去には、様々なパーツをリリースしていたニスモ。当然、スポーツパーツの相場感などは熟知している。それでも、驚きのプライスタグを掲げたからには、そこには深い理由があったのだ。
つまり、その価格の中には、今までにない絶対的な安心感と価値という新しいカテゴリーが盛り込まれていたというわけだ。
もちろん、性能と品質については日産とニスモが総力を挙げて開発しただけに折り紙つきであることは間違いない。絶対的な安心と3年後の価値を選ぶかは、オーナーのみに許された特権なのだ。
そして、次なるニスモの動きに期待が高まる!

田中利和
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 
取締役ユーザーサポート企画部
1988年入社。根っからのクルマ好き。過去には初代GT-R(KPGC10)、R32 GT-Rなども所有するGT-Rフリークでもある。R34 GT-Rをベースとしたニスモコンプリートカー「Z-tune」も田中の企画。