NISMO再始動!第3回 『R35 GT-Rニスモパーツ詳細』

絶対的な安心感を目標に開発されたNISMOクラブスポーツパッケージ。
過去に例を見ないプライスタグを掲げて登場したパーツ群は、はたしてどのようなパーツなのか?今回は、開発の取りまとめを行った岡村潤平に聞いてみた。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net / NISMO



品名希望小売価格適用
NISMOクラブスポーツパッケージ ¥5,460,000(税込) シャシーパッケージ、カーボンバケットシート
チタンエキゾーストシステム
「NISMO」エンブレム

■開発の目的は?■
NISMO CLUB SPORTS PACKAGE
開発の第一目標は、絶対的な安心感です。それは日産自動車の保証を継続できる品質・強度、そして性能を確保することです。
この基本的な考え方の上に立って、サーキットでスポーツ走行を楽しむこと。安定して速いラップタイムを刻めることを目標性能としました。
もちろん、速さのみを追求したわけではなく、一般的なドライバーがコントロールできる操縦性にしてあります。ラップタイムは速いが、コントロールが難しくなるようなセッティングではないんです。
具体的なイメージですが、ある程度ステアリングで向きを変えられるようにしました。ブレーキングでしっかりと荷重移動をさせてタイヤのグリップをあげないと曲がれないというようなセットではありません。もちろん、限界を超えたところでの動きも、ピーキーなものではなくコントロールしやすいものとしてあります。ある意味、ノーマルの方がステアリング特性は敏感かもしれませんが、ニスモのセットはコーナリング中の修正舵も少なくなり、安心感が高いと思いますよ。

品名希望小売価格適用
シャシーパッケージ ¥2,205,000(税込) 専用サスペンション
専用タイヤ
専用ホイール

■ダンパー■


ノーマルで、ダンプトロニックという凄く良いモノがついていますので、同じビルシュタイン製のダンプトロニックを採用しました。したがって、セットアップスイッチはそのまま使えます。やはり、ニスモとしては、元々ある機能はそのまま使いたいわけです。そこで、ニスモ仕様はサーキット走行を前提にしているので、Rモードの減衰力のみを変更しました。だから、サーキットの往復や普段の街乗りには、ノーマルモードもしくはコンフォートモードを使えば意外と快適ですよ。
ビルシュタイン製のダンパーには、メインバルブとコンフォートバルブがあります。今回は、コンフォートバルブはそのままに、メインバルブのみで減衰力のチューニングを行っています。特にリアの減衰力チューニングが特徴的だと思います。ノーマルに対して、縮み側の低速域の減衰力を高くしています。これは、加速時のフロントの接地性を高めることに主眼を置いています。リアの沈み込みを押さえる目的ですね。GT-Rは4WDですから、加速時にもフロントタイヤのトラクションを有効にしたいわけです。
一方、伸び側は比較的高速域の減衰力を高くしています。今度は減速時やターンイン時の
リアの接地性を高めることが目的です。リアの浮き上げりを防止し、ターンインの際のリアのイン側タイヤの空転を防止しています。つまりサーキットに於ける減速・ターンイン・加速の各セクションで4輪がちゃんと接地する様にセットアップしたということです。

<仕様/ショックアブソーバー>
・ビルシュタイン製
・Bilstein Damp Tronic採用(3モード切り替え)(Rモードの減衰力を専用セッティング)
 ※減衰力の切り替えは、純正のセットアップスイッチを使用します
 ※Bilstein Damp Tronicは、ドイツThyssenkrupp Bilstein Suspension GmbHの登録商標です
・形状/純正と同形状
・色/黒、「NISMO」ロゴ入り



NISMO CLUB SPORTS PACKAGE

■スプリング■



このダンパーに組み合わせたスプリングは、フロントをワンランクアップして、ロール剛性を高めています。できる限りネガティブな部分はなくしたつもりです。もちろん、大きなギャップを通過する際は、スプリングが強化された分、硬いのですが、全体としては、角の取れた乗り味で、変なピッチングもなく非常にバランス良く仕上がっていると思いますね。

  Fr Rr
スプリングバネ定数 N/mm(kgf/mm) 181(18.5) 94(9.6)
車高変化代(mm) 0 0

さて、なぜ車高を下げなかったのか?という疑問を皆さん持つと思います。以前のニスモなら、車高調整キットやローダウンサスペンションキットが主流でしたから、この疑問は当然のことと思います。
今回、車高を下げなかった理由は、冒頭にも申し上げました「日産自動車の保証が継続可能な絶対的な安心感」を確保するためです。そのためには、純正品と同じ強度・品質を保つ必要があります。例えば、ダンパーのケース材質を変更しただけでも様々な実験を行わなければなりません。車高調整機能をつければ、それこそ純正品とは全く異なる部品になるのですから強度・品質確認の為の実験に大変なコストと時間がかかってしまい、最終的にお客様に負担を強いることになってしまいます。
では、ダンパーは純正品そのままで、スプリングだけローダウンスプリングにしてはどうか?という案もあります。しかしながら、GT-Rのノーマルスプリングは既にギリギリの設計となっているのです。更にバネレートアップしてローダウン化しようとすると、スプリングの自由長が短くなってしまい、純正のダンパーのストロークでは対応できなくなるのです。もちろん、ダンパー自体を当初からショートストローク化してしまえば、サーキットでの操安性の部分は解決できますが、先に申し上げましたように、純正品並みの品質確認を新たに行わなければならず、今回は価格と開発期間の観点から車高を変えなかったわけです。


■タイヤ■


今回のパーツラインナップにあたり、最もエポックメイキングなことは、ニスモとして本格的にタイヤ開発にも取り組んだ点だと思います。
サーキットでスポーツ走行を行った際、ノーマルタイヤは、コーナリング中、特に輪荷重の高い領域ではトレッド面がよれてしまう傾向が見られました。その結果、グリップ力が低下しアンダーステア傾向となる。これを改善するため、まずトレッド面の剛性を上げることをしました。具体的には、IN側のトレッドパターンを変更し、ブロックの数を減らすと同時に構造も変更しています。トレッド面を見ていただければ判るように、思い切ってトレッドデザインの変更まで行いました。さらに、コンパウンドも変更しグリップ力を向上させています。最後にタイヤとして全体をバランスさせるように、サイド剛性も構造から見直して高めたのです。この結果、仙台ハイランドでは、ノーマルのブリヂストンRE070Rよりも1秒以上速いラップタイムを安定して出せるようになりました。
ライフについても、意外と落ちませんでした。安定したタイムで40ラップくらいはいけるので、ノーマル並のライフだと思います。
今回開発したタイヤは、ドライのサーキット専用というものではありません。一般走行も考慮し、ウェット性能はノーマル並みの性能を持たせてありますし、ロードノイズについても同様にノーマル並みの性能としましたので、安心してお使いいただけるはずです。

<仕様/タイヤ>
・サイズ Fr 255/40 ZRF20、Rr 285/35 ZRF20
・銘柄 ブリヂストン製 ポテンザRE070R
・ランフラットタイヤ

■ホイール■
ホイールは、軽量化が大きな目的でした。同時に剛性も高めています。その他の耐衝撃性などの強度は、ノーマルと同等にしました。結果的に、フロント用で1.6kg、リア用で1.4kgほどの軽量化を達成しています。
耐久性については、今年の十勝24時間レースにも使いましたが、全く問題ないレベルでしたね。

レイズ製アルミ鍛造 1ピース
サイズ Fr 20×9.5J オフセット+45、Rr 20×10.5J オフセット+25
PCD φ114.3、5穴
重量/本 Fr 10.3Kg(-1.6Kg)、Rr 10.8Kg(-1.4Kg)/( )内は日産純正品との重量差
カラー ガンメタリック
「NISMO」ロゴ入り
付属品 センターキャップ(フラットタイプ、ガンメタリック色)、
TPMSセンサー一体型エアバルブ(TPMS=Tire Pressure Monitoring System)

補修品についてですが、NISMOクラブスポーツパッケージもしくはシャシーパッケージを購入された方には、タイヤもホイールも補修品としてエキスパートショップからの購入は可能です。

このシャシーパッケージを装着すると、結果的に街乗りでもいい具合になりました。普通の道をちょっと走ってもらえばわかるくらいです。特にワダチによるステアリングへの影響は少なくなっているし、乗り心地も良くなっている。全体的には、クルマの動きが軽く感じられると思います。

-------------------------------------------------------------------------------------
岡村潤平
ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社 
ユーザーサポート企画部ジェネラルマネジャー
1989年入社。パリダカを中心とする海外ラリー向けエンジン、スーパー耐久、GT300用などのモータースポーツ用エンジンを担当する。2000年からは、商品の開発を担当し、エンジンチューニングメニューから、シャシー系パーツ、コンプリートカーまで幅広く担当。2008年1月 ユーザーサポート企画部に異動し、NISMOクラブスポーツパッケージの開発に携わる。