ニスモ・チームかく戦えり
序盤3戦を終えて
SUPER GT Rd.3 富士 あまりに大きかった2連勝の代償





















2度目の性能調整はどれほどの影響を与えたのですか?
同一マシンが2戦連続で勝てないようにしているのが、SUPER GTのレギュレーションです。その中で、同じ車種、同じ号車が連勝というありえないことをやってしまいました。
それで、もともとの予選とレースの結果によるハンディウエイトが115kg。これはもうレギュレーションで決まっています。ところが、特別性能調整がそれまで50kgだったのが、GT-Rは全車80kgに増量っていうのが、GTAのほうから決められて…。レギュレーションだから仕方ないですけど、非常に苦しい状態で富士に臨んだわけです。

23号車の搭載ウエイトは、トータルで195kg。積めるウエイトは100kgまでなので、95kg分はリストリクターを小さくすることで相殺し、今までより2mm小さく27.0φになりました。それが半端じゃないくらい小さくて。2mmってどのくらいかというと、60馬力以上なくなるんですね。ストレートの速さでいうと、ほとんどGT300のポルシェと同じ。「GT400ちょっと」みたいな(苦笑)、そういう状態が23号車。実際にスピードガンで測ってみるとストレートで20km/hぐらい遅い。2mmも絞るなんてまったく想定外ですよ。ありえないです。エンジン屋さんは困りました。そんなテストしていないから。性能調整が決まったのは岡山の直後。3週間くらいしかなかった。ベンチでテストしようにも、エンジン屋さんは「そんな小さいリストリクターはないよ」って。リストリクターを作るところから始まりました(苦笑)。

富士に行って、金曜日にそのセットアップというかね、エンジンの調整をして…。完璧な状態にはならないですよ。なんかボソボソ回っているみたいな。ギア比だって、そんなに高回転まで回したって意味ないから、ものすごくハイギヤードのやつにしました。普通の生産車より、よっぽど低い回転数でシフトアップして…。
そういう状態では、どうやってもあの長い富士のストレートでは…。
昨年の第3戦・富士では、赤旗が入った上、完走が9台しかなかった荒れたレースになっていましたが、そういうのしかチャンスがないだろうな、と思いました。
だけど、前車との間が詰まっても自力で抜くというのができない。唯一、あるとしたらピットインを1回にしてチャンスをうかがうことです。GT500の場合、第3戦・富士では普通、2回ピットなんですけども、それを1ピットにする。チャンスは、相手が通常2回のところを、天気がすごくよくなってタイヤがつらくなって3ピットになる場合などですね。そういう、何かハプニングがあった場合にのみ、それなりに上位に行ける可能性があると考えたんです。

23号車の常識破りの1ピット作戦は最初から考えましたか?
富士へ来る前は、1ピット作戦はひとつのオプションとして考えてはいました。
実際に金曜、土曜と走ってみて、小さいリストリクターでのデータもなかったのですが、燃費をとってみると、少し頑張るといけるかもしれないというのが見えてきました。
1ピットでいくということは、普通GT500だとありえないんですけど、そこまでリストリクターを小さくしていますので、あまり燃料も使わないということです。
通常の2ピットのままで、全力で走らせたとしてもビリは間違いなし。2ラップ遅れくらいは間違いなしだったので、だったら何か異常なことがあったときに人と違うことをやっていて、ピットインの回数を得するとか、そういう可能性に賭けたわけですよね。
ところが今年、何のハプニングも起きなかった…。

ドライバーは、本当にちゃんと走ってくれて、ブノワが50何周かで入ってきたときもガソリン残量が1リッターくらいしか残っていないし、本山がゴールしたあとも1リッターくらいしか残っていなかった。完璧に計算したとおりに、走ってくれたんです。しかしながら、何も起きないレースだったんで、3ラップダウンになってしまいました。予定通りに走ってあれが一杯一杯ですね。
でも、そういう遅いクルマで本当にドライバーに申し訳なかったけど、ワンピット作戦やるっていうのを予定通り着実にやってくれました。すごい連中だと思います。


ハプニングがあれば表彰台も狙えた22号車
22号車のほうは、車重1200kgでリストリクターはノーマルの29.0φでした。予選はとにかく雨に悩まされました。ずっと雨だったら良かったんですけど、途中乾いてきて、それでまたザーッときて、そのタイミングを逃してしまって…。15位で、後方スタートになりました。ただ、クルマそのものは結構走れる能力あるのは確認していたので、着実に上がっていけばそれなりの順位までには上がっていけるだろうし、ハプニングがあれば表彰台だって不可能ではないと思っていました。
序盤、22号車が12号車をちょっと押し出しちゃって。私は、2台ともレースをやっているので、それも仕方ないと思いましたし、あの結果に対してペナルティを取られても当然かと。
監督としては、もうちょっとマイケルに落ち着いて行けといってあげてね、長いレースの序盤だったんで、もうすこしゆったりした気持ちで走らせてやれればよかったのかなと反省しています。
ドライバーの気持ちとしては、12号車が遅いと感じていたんでしょう。2台のセットアップが違ったんですよ。12号車は、結構ストレート重視のセットアップにして、コーナーは遅かったんです。22号車は、逆にストレートよりもコーナー寄りのセットアップをしていました。当然、ストレートで抜こうと思っても12号車は離れていっちゃう。だけど1コーナーを曲がってから、コーナリングでは22号車のほうが速くて、コーナーでどんどん追いつくけど抜けない。まぁ、その繰り返しで。イライラが募っていったんだと思います。ドライバーとしてはマイケルもセバスチャンもレースを一杯一杯やっていたわけですよ。ただ、日産全体で考えると誰も得をしなかったというところで、とくにぶつけてしまったうちは反省が必要だと思っています。

2度目の特別性能調整について思うことは…
予選は天候がいろいろ変わったという要素があったにせよ、GT-Rはみんな下に沈んでしまいました。レースの日の朝のプラクティスでも、中古タイヤで燃料積んでレースの最終確認をするんですけども、そのラップタイムもみんな下のほうにいましたよね。実際、レースもフタを開けてみると、上位に上がりたくても上がれないという状態で。

5万6900人の大観衆のうち、速いGT-Rを楽しみに来られたお客様も多かったと思うんですけど、その期待に対して本当に申し訳ないレースになってしまったなと。今回の特別性能調整は行き過ぎだと、私は正直思います。ラウンド1の結果で性能調整したものを、続くラウンド2の結果でさらに調整したのは、あまりにも早急ぎやしませんかということです。
性能調整が加わって、ブッチギリだったのがかなり拮抗したレースなり、結果としてSCが勝ってもいいと思うですけども、NSXとSCがいい勝負していたように、そこにGT-Rが1台か2台ね、混ざって4、5台でトップ争いしていれば、お客様はみんな喜んでくれると思うんです。性能調整というのは、本来そういうもんじゃないかなと。

開幕の1,2戦で速かったGT-Rっていうのは、最初にもお話したように特認車両だからじゃなくて、ドライバーを含めチームのみんなが頑張った結果、本当に技術的にがんばった結果です。一所懸命やったところが、なぜつらい仕打ちを受けなきゃならないのか? やらない方が得なのか? これはお客様にとってもチームにとっても由々しき問題だと思います。頑張った人が、強くなる速くなるのは当たり前でしょう。
今回の特別性能調整っていうか、ラウンド3の結果はいたく残念です。
苦しい状態の中でも、ニスモ・チームは、その時々の最高のパフォーマンスを出してがんばり続けます。皆さんの応援が最高の力になりますので、宜しくお願いします。



Photo: Takahiro Masuda & GTR-WORLD