BNR34
1999年全日本GT選手権GT500仕様
ペンズオイル・ニスモGT-R


Text: Motor Magazine
Photo: Hidekazu Nagamoto(MM)
By courtesy of GT-R BROS, Motor Magazine, 1991.
98年仕様のR33の基本設計を受け継いだ正常進化版GTマシン
その手堅い手法が勝利を引き寄せる



 全日本GT選手権、スーパーGTに出場したスカイラインの中でも、最も形態が変化したのがR34スカイラインGT-R。99年の登場時には市販車と同じRB26DETTエンジンとモノコックを使用していた。その後、エンジンはV6のVQに換装され、レギュレーションの変更によりトランスアクスル化とフロントとリアのパイプフレーム化されたのはご存知のとおり。R34初年度の99年シーズンは、23号車はエリック・コマス/本山哲のコンビで戦い、シリーズ6戦全戦でポイント圏内に入る活躍で、コマス選手が2年連続のドライバーズ・チャンピオンに輝いた。




リヤスポイラーは、Uの字型に湾曲した特徴的なデザイン。1998年仕様のR33に比べても非常にシンプルになった。
GT仕様のスカイラインGT-Rは93年のR32から毎年進化を続け、99年仕様はR34スカイラインGT-Rをベースにして市販車が発表される直前の98年12月中に富士スピードウェイで早くもシェイクダウンが行なわれた。さらに、99年2月には鈴鹿でもテストが行なわれ、速さを増したNSXに対抗できるマシンへと熟成を進めた。
 98年の全日本GT選手権は、NSXが安定度を高めるまでのシーズン序盤にペンズオイルが2連勝を挙げ、辛うじてタイトルを獲得したが、現状のままでは99年シーズンはかなり苦しい戦いを強いられるだろうと、大幅な戦闘力アップを図るために早くから開発が進められた。98年6月には方向性が決まり、7月には図面を引き始めたという。 




ドライサンプ仕様のエンジンは見えないほどの下にある。ステアリングギアボックスは、ヘッドカバーの上に位置している。
 というのも製作コンセプトが、早く作り上げてテスト期間を長く取ることだったためだ。もちろん、タイム的な目標は各サーキットでNSXが叩き出したレコードタイムを破ることに他ならない。というのも、99年のレギュレーションが最大のライバルであるNSXの速さを削る方向で改定となったものの、無限と童夢がレギュレーションによるハンデを受けて甘んじるはずはなく、NSXは少なくとも98年レベルの性能を維持してくることは確実だったからだ。
 とはいえ、R33スカイラインGT-Rをベースにした98年仕様でNSXに劣っていたのはストレートスピードだけ。マシンの信頼性やコーナー進入時のブレーキング、タイヤの持ちなどNSXを凌ぐ要素は多い。そこでニスモは、98年仕様で気になった箇所を改良しつつ正常進化させたR34をベースに99年仕様のGTマシンを作り上げた。

室内のインパネなどの基本構成はR33を継承する。ロールケージのフロント部分の入れ方を改良し剛性をアップさせている。
シート位置はレギュレーションで許される範囲で、極力後方に移動している。かつてのDTMマシンに近い作り込みになった。
 ロールケージの入れ方は、フロントピラー周りをがっちりと作った以外は98年仕様と同じレイアウトとされている。ボディ補強もほぼ同じように入れられているが、R34になってホイールベースが短くなっていることから、ホイールベース間はそれだけでねじりや曲げに強くなっているはずで、剛性感は98年仕様に比べ大幅に向上している。











ペダルはフォーミュラカーと同じオルガン式。シフトは6速シーケンシャルで、クラッチはほとんど使わなくてもシフトできる。
 ただ、ホイールベースが短くなったことで、98年仕様で後方に下げたミッションを少し前にずらしてマウントしている。ただし、エンジンの搭載位置は98年仕様と同じ位置にマウントされ、エンジンマウントなどの作りも98年仕様と同様になっている。さらに、サスペンションの取り付け部やその周辺、リアのサブフレームなど、その構造や作りも98年仕様と変わるところはなく、そういった部分でもR34スカイラインGT-Rベースの99年仕様が98年仕様の正常進化版だということがわかるだろう。






巨大なAP6ポット仕様のフロントブレーキ。PIシステムのホイールストロークセンサーも後ろに見えている。サスペンションの基本レイアウトはR33と変わっていないという。指摘されていたトラクション不足はどう解決したのか?
 サスペンションで変わったのは、最低地上高が45mmと明記されたこととロールセンターの見直し、ダンパーの取り付け位置の変更によるレバー比の変更だけ。もっとも、サスペンションジオメトリーがレーシングカーのコーナリングに与える影響を考えれば、大きな変更だといえる。
 ボディ補強、フレームワーク、サスペンションは98年仕様からのアップデート版だったが、こと空力に関しては99年仕様は大きく変更されることになった。







R33のように左ヘッドライトをエアインテークにしていないので、市販車のイメージがきっちりと残っている。
 フロント両端の余分な造形を省き、フロントアンダーパネルと床下でダウンフォースを得られるデザインになったことで、ドラッグを減らしつつもダウンフォースを維持している。フロントスポイラーはリップの部分のボリュームを持たせて、インタークーラー開口部を小さめにデザイン。オイルクーラーのエアアウトレットをボンネットに配置することで、バンパーサイドにあった開口部が廃止されている。








レギュレーションの変更で1998年仕様R33のように、大胆にフロントフェンダーをカットできなくなったので側面はおとなしい。
 ボディサイドはレギュレーションでタイヤのトレッド面が120度の範囲は見えてはいけないということで、98年仕様のような大胆に後方からタイヤが見えるフロントフェンダーからオーソドックスなデザインへと変わっている。とはいっても、98年仕様で狙ったホイールハウス内の空気をスムーズに排出してドラッグを減らすというアイデアは99年仕様にも生きていて、レギュレーションに抵触しない後方下部のデザイン処理だけで98年仕様に近い効果を発揮している。






リヤスポイラーの大きさが目立つリヤスタイル。NASCARのようにディテールを省略したシンプルな面の構成だ。
 リアエンドは燃料タンクがリアタイヤ前方、床下へとマウントされたことを受けて、トランクフロア下をがらんどうにしてディフューザーをつけず、床下からの排出性をよくしている。リアウィングは98年仕様からの発展版で、車の性能は98年のNSXを凌いでいる。









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