さる1月8日に発表されたスペックV。ようやく、その全貌が明らかになったわけだが、今回はその詳細をご報告しよう。

Text: GTR-World.net
Photo: GTR-World.net



その前に、事前に我々が入手した情報と最終的に発表されたスペックVの仕様に違いがあった。
まず、タイヤ。当サイトの事前情報ではSタイヤが装着されるとお伝えしたが、実際には通常のランフラットタイヤの発展型が装着された。この詳細については後ほど解説する。
次に、重量。同じく事前の情報では約90kgの軽量化とレポートしたが、実際には約60kgの軽量化と事前情報に差異があった。こちらも後ほど、スペックVにおける軽量化の手法として解説したい。
以上、2点が事前のレポートと異なった点である。
ご存知のようにGT-Rに関しては、かなり厳しい緘口令が日産内部で徹底されている。通常、報道機関に対しては発表日に合わせて事前情報を公開してくれるのがこれまでの慣例だったのだが、GT-Rはこの点においても異例のクルマ。当サイトとしても総力を挙げて情報収集行ったのだが、まずは読者の皆さまにお詫びしたい。

本題に移る。まずはエンジンから。





■エンジン
スペックVに搭載されるVR38DETTは、

最高出力  485ps/6400rpm
最大トルク 60kgf・m/3200~5200rpm

と12月に発売された09モデルの基準車と同じ。
ただし、すでに報告したように一時的にブーストアップする機能が搭載されている。「ハイギヤードブースト」と命名されたこの機能は、スイッチを入れると80秒間だけ最大トルクが60㎏から62kgにアップする。さらに一度作動させると次の80秒間はスイッチを入れても作動しない。これは、高負荷な状態からエンジンを保護するための機能ということだそうだ。これは、センターコンソールにある3つのセットアップスイッチの真ん中(基準車ではダンパーのセットアップスイッチがある位置)、もしくはステアリングホイールにあるスイッチを押すことで作動する。
ちなみに、日産自動車の説明では、このスイッチを押すことで1段高いギヤで走ることが可能となり、燃費も10%程度向上するとのこと。簡単に言えば、シフトダウンせずに、このスイッチを押せば必要な加速力が得られるというわけだ。

また、あまり目立たないところだが、ラジエターキャップの圧力が高いものに変更された。サーキット走行時などの連続高負荷運転を行った際、特にピットに停車した瞬間に冷却水温度が急上昇し圧力が高まる。通常のキャップ圧では、この瞬間に圧力が抜け再スタートした際にはラジエターの内圧が低い状態になる。これを防ぐために、開弁圧の高いラジエターキャップを使うのだが、これまでのアフターマーケットのキャップ圧は127kgf、あるいは147kgfというのが、比較的高い部類であった。これに対し、スペックVは標準で180kgfという、かなりハイスペックなものが装着されているから驚きだ。
その他、スペックVのみエンジンカバーがシルバーからブラックに変更されている。








■ブレーキ
スペックVの目玉は、なんと言ってもカーボンセラミックブレーキだ。これを日産ではNCCB(Nissan Carbon Ceramic Brake)と称している。
カーボンローターの軽さは驚くほどで、これだけで1輪あたり5kgの軽量化となっている。これをホイールとセットにすれば、1輪あたり7kg弱。4輪で28kg弱のバネ下の軽量化となるわけだから、その効果はまさに未体験領域だ。
キャリパーについては、基準車のスチール製ローターのものと同じもの。ただし、ローターの厚みなどの違いから、オフセットのみ変更されている。
また、色も基準車のゴールドからシルバーに変更された。この変更にも理由があって、放射熱を反射するための色変更なのだ。カーボン製ローターは真っ赤になると、それこそカーボンヒーターと同じように放射熱が高い。この放射熱によるキャリパーへの影響を低減するための処置だ。また、フロントリップスポイラーに設けられたブレーキダクトから導かれた空気は、フロントスタビライザーに取り付けられた樹脂製の導風板を介してキャリパーの冷却に使われている。昨年7月の十勝24時間レースに参戦したGT-Rにも同様な導風板が装着されていた。
気になるライフは、ローターの寿命はスチール製のものよりも長いそうだが、パッドの寿命は20%減。ローター1回交換の間に、パッドは3回交換のイメージとなるそうだ。もちろん、個々の走行条件によって大きく変動するが、ちなみに、仙台ハイランドで鈴木利男氏が全開走行しても1日は持つとのこと。

問題は、そのメンテナンス費だ。ローターとパッドのセット交換で部品代のみに470万円もかかる。さらに交換工賃とナラシにかかる経費が発生するのだ。ナラシは、専門のメカニックがサーキットもしくはそれに順ずるような場所で行うため、そこまでの交通費やコース借用費が上乗せされる。運悪く、予定していた日が突然の雨により流れた場合も、コースに対する費用は発生し、それはオーナー負担となるそうだ。また、ディーラーによってこうした経費がマチマチという点も要注意となろう。
いずれにせよ、購入時にもそれなりの覚悟が必要だが、ランニングコストの面でも覚悟が必要なクルマであることは間違いない。











■軽量化
スペックVは、基準車に対して-60㎏の軽量化がなされている。水野CPS&CVEによれば「スペックVの軽量化はイナーシャの低減を目的に行っている」ということで、やみくもに軽量化を行ったわけではないという。
クルマに発生するイナーシャは、2つある。

1つはクルマの回転部分に発生するイナーシャ。主にホイールやブレーキローターがスペックVの軽量化アイテムとなっている。これだけで、約28㎏。しかもバネ下の軽量化にもなる。

もう1つは、コーナリング時のイナーシャだ。主に、車両の重心点よりも上の軽量化が有効となる。スペックVでは、フロントシートをカーボン製のリクライニングバケットに交換。これもNISMOクラブスポーツと同じだが、2脚で12㎏の軽量化。さらにリヤシートを廃止し、リヤスポイラーもカーボン化するなど、主にフロアパネルから上の軽量化を行っている。
さらにフロア下のマフラーをこれもNISMOクラブスポーツパッケージと同じチタンマフラーに交換し、5㎏の軽量化となっている。
これらの内訳を整理すると

ホイール&カーボンブレーキブレーキ     28㎏
フロントシート2脚カーボン化        12㎏
リヤシート廃止&リヤスポイーラーカーボン化 15㎏
マフラーチタン化               5㎏
トータルの軽量化              60㎏

当初予想された、防振・防音装備の廃止はなかった。
また、エアコンやオーディオも装備されている。


■サスペンション
ダンパーは減衰力固定式となった。これにともない、センターコンソールにあったダンパーのモードスイッチは廃止されている。
減衰力固定にすることで、バルブの設計は自由度が増す。特にスペックVはサーキット走行にターゲットを絞っていることから、あえてコンフォートモードなどは必要とせず、ターゲットとするステージに合わせこんだ結果と言えるだろう。
ピストンロッドも鏡面仕上げを施し、表面段差も0.2ミクロンという精度を達成。ダンパーのフリクション低減を目指している。
組み合わされるスプリングは、データは公開されていないが、単体を見る限りかなりレートの高いものが採用されているようだ。
先に発売されたNISMOクラブスポーツパッケージのバネレートは、フロント18.5kg/リヤ9.6kgというハイレートなものだが、スペックVはそれ以上のものが装着されていることは間違いないだろう。

この他、スタビライザー、エンジンマウントなどもスペックV専用の走り重視のセットアップが施されている。
また空車時の車高は基準車よりも10mm程度低くなっている。
気になる乗り心地だが、水野CPSによれば、「意外なほど乗り心地は良い。特に細かい凹凸は上手く吸収している。もちろん、大きな段差は固いスプリングの乗り心地となるが」ということだ。スペックVのインプレッションが楽しみだ。






■タイヤ
タイヤについては予想外の展開となった。当サイトでは、Sタイヤが装着されるであろうと予想していたのだが、実際に装着されたタイヤはブリヂストン製ランフラットタイヤ「POTENZA RE070R」であった。基本的には、基準車のタイヤと同じ部類に属するが、むしろ、先に発売されたNISMOクラブスポーツパッケージ用のタイヤに近い。
NISMOクラブスポーツパッケージのタイヤは、基準車のタイヤとトレッド面のデザインが異なり、IN側のブロックの一つ一つが大きくなっている。スペックVの標準装着タイヤはこのトレッドデザインと同じだ。ただし、スペックVのサスペンションに合わせて、コンパウンドや構造自体も新規開発している。水野CPSによれば、このタイヤをNISMOクラブスポーツに装着すると大きくバランスが崩れるとのこと。スペックⅤのハードサスに合わせてあるからだ。
一方、オプション扱いで基準車と同じダンロップタイヤを選ぶことができる。単純にラップタイムのみを比較すればダンロップタイヤが僅かながら速いらしい。しかし、ライフを含めたトータル性能を考慮すればブリヂストン製タイヤの方がユーザーニーズにマッチしているらしい。
この専用タイヤを、NISMOクラブスポーツと同じ、RAYS製の鍛造1ピースホイールに組み合わせている。ただし、色はブラックでリム周辺がシルバーになっている。
このホイールは、基準車のホイールに対し、1本当たりフロントは-1.6㎏、リヤは-1.4㎏の軽量化がなされている。





■その他
主に機能面の変更のほか、以下の 部分が基準車から変更されている。
フロントグリルがカーボン化された他、インテリアも基準車との差別化がなされている。
大きなところでは、撤去されたリヤシートの位置にはキルティングのカバーが取り付けられた。これは、ジェット戦闘機などの内装からイメージされたものだそうだ。
さらにリヤシート中央部分もカーボン製のカバーが取り付けられた。オプションのBOSEサウンド用のカバーもカーボン製となり、音質はさらに向上したとのこと。

スペックVの販売は、全国7店舗のみとなっている。
まずは、以下のスペックV専用サイトをチェックし、その上でディーラーに相談することをお奨めする。
なにしろ、買うにも乗るにも、それなりの覚悟が必要なクルマなのである。


http://www2.nissan.co.jp/GT-R/SPECV/