既に、GT-Rチューナーとして名高いマインズ 新倉代表のスペックVインプレッションをお届けしたが、試乗車は残念ながらナラシの最中だった。実はその後、本誌webディレクターの井上もナラシの終了したスペックVに試乗する機会を得た。
井上はR34 GT-RからR35 GT-Rへ乗り換えた生粋のGT-Rオーナーの一人。今回は、GT-Rオーナーの代表として、また一般ドライバーの代表としてスペックVのショートインプレッションをお届けしよう。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: Dino Dalle Carbonare













箱根で出合ったスペックVは、専用色のアルティメイトオパールブラック。細かい線キズが目立つので手入れが大変そうだ。オドメーターは約2000kmの走行距離を示していたから、ナラシはほぼ終了したところと言っていいだろう。
一見するとノーマルのGT-Rにも見えなくはないが、ホイールのスキマから見えるローターは、これまで見慣れてきたスチール製のそれとは異なり、明らかに凄みを効かせた存在感を放っている。
これから、このクルマに乗るのかと思えば、当然、期待に胸が膨らんでくるのは仕方が無いことだろう。

-ハイギヤードブーストのエンジンはどうなのか!
-カーボンブレーキの感触はどんなだろうか!
-専用サスペンションの味付けはハードか!

興奮を抑えつつ、カーボン製のリクライニング式バケットシートに身を沈める。コックピットから見る風景は、普段のGT-Rと大きくは異ならない。僅かに、基準車ではアルミ製のワンポイントとなっている部分がブラックアウト、もしくはカーボン調に変更されている辺りにスペックVらしさを感じる程度だ。

走り出して最初に感じるのが、「足がよく動くな」という印象だ。07年12月生産の基準車と比較すると、断然しなやかで乗り心地も良いことに驚かされる。前評判では、快適性はなくスパルタンなクルマと聞いていただけに、意表をつかれた思いだ。おそらく、デイリーユースに耐えるくらいの乗り心地で、たとえば首都高の継ぎ目などでも収束が早く不快感はないだろう。

カーボンブレーキのタッチだが、走りだしてスグのブレーキが冷えている状態では、初期の効きはよいとは言えない印象だ。ただし、すぐに暖まるので問題ない。むしろ、そうなると本領を発揮し、従来のチューンドブレーキよりは断然良く、感動的なブレーキフィールであった。

さて、人もクルマも暖まってきたところでペースアップしてみると、これまた感動の嵐だった。
まずはサスペンションだが、ハンドリングは比較的ロールを伴うものの秀逸の一言に尽きる。ドライバーのおしりの下を中心に車が回転するような錯覚を覚えるほど良く曲がるのだ。この足ならば、日常走行での乗り心地と走りの良さをかなり高い次元で両立していて羨ましいと思ったほど。それゆえ、サスペンションの切り替えスイッチが排除された点もうなずけるのだ。一方、ブレーキに関しては前述の通り、感動的な制動力を発揮してくれるので、どんなシーンでも安心して踏んでいける。

続いてスペックVのもう一つの目玉アイテムであるハイギヤードブーストを試してみた。この機能は、3速以上で使えるようだ。スイッチを入れると、中間域のパワー&トルクが増える感じだ。モリモリ感とは異なる印象で、フラットなトルク特性がそのままワンランク上のパワー感といったイメージだろう。当然のことながら、リニアな加速感が得られ、その加速感は基準車と大きく異なる。GT-Rの場合、3速ともなれば相当なスピードとなってしまうので、箱根で全てを体験することは無謀の極み。自分の腕では手に余るものがあったことは事実。ただ、ハイギヤードブーストという名の通り、コーナー出口などの立ち上がりでは、一般ドライバーにとってもその効果の恩恵に預かることはできる。
とはいえ、スペックVの真価を味わうにはやはりサーキットが相応しいのかもしれない。

総評すると、基準車よりもクルマは軽く感じられる。
特によく曲がるサスペンションセットとブレーキング性能は特筆ものではないだろうか。
そして何よりも、日常性が損なわれていない点に驚かされた。
さすがは、メーカー仕事と思わせてくる仕上がりだと思う。