◆迷ったら1段高いギヤが使える中間トルク

今年5月にリリースされたR35 GT-R用NISMOスポーツリセッティング装着車を公道で試乗する機会を得たのでご報告しよう。

NISMOでは先代のGT-Rから、エンジンチューニングメニューを一般のオーナー向けに展開してきた。スポーツリセッティング、S1、R1など、RB26DETTには用途や好みに応じてメニューが準備されていた。今回、R35 GT-R用としてリリースされたのは、最もベーシックなスポーツリセッティング。

スポーツリセッティングとは?
簡単に言えば、スポーツリセッティングは、NISMOがリリースするECM(エンジンコンピューター)で、最もベーシックなチューニングが施されている。コンセプトは、「生産車のパワーフィールでは物足りない。しかし、耐久性は犠牲にしたくないというユーザーに向けたメニュー。生産車が持っている安全マージンをほんの少しだけ開放することで、そのエンジンが本来持っている性能を引き出す。ECMのリセッティングを中心とする最小限のチューニングで信頼性を損なうことなく、よりスポーティなエンジン特性とし、気持ちのいいドライブフィールを約束する」というもの。
そのコンセプトはR35 GT-R用スポーツリセッティングにも継承されている。

NISMOのリリースによれば、R35 GT-R用スポーツリセッティングは、主に中低速領域のチューニングが施されているとある。この領域における若干のブーストアップと空燃比などのリセッティングにより、サーキットでのタイムアップ。特にシケインや低速コーナーからの脱出速度にメリットがあるという。この二次的効果として、07、08モデルに関しては09モデル並みに燃費が向上するというオマケもつく。さらに車速リミッターやオートクルーズの設定値も変更されているという。サーキットに着いて、サーキットモードを設定するための複雑な操作をしなくてすむ点はありがたい。

また、エンジンコンピューターのみでなく、トランスミッションを制御するコンピューターも変更される点も注目に値する。R35のミッションは、シフトレバーを<Mレンジ>に倒すとパドルシフトでマニュアル操作が可能になる。ただし、モードスイッチが<ノーマル>の場合は、レブリミットに当たる直前に自動シフトアップする。一方、モードスイッチを<Rモード>にするとレブリミットに当たり完全なマニュアルモードになる。現在、サーキット走行をする場合は、この<Mレンジ>+<Rモード>で走るのが通例となっている。ちなみ、<Mレンジ>+<ノーマルモード>ではシフトダウンの際のスピード遅い。これを嫌って前者で走るのだ。NISMOのスポーツリセッティングではこの<Mレンジ>+<ノーマルモード>におけるダウンシフトスピードを<Mレンジ>+<Rモード>と同じ設定にしたというもの。これにより、ドライバーはレブリミットを気にすることなく、素早いシフトワークが可能になるというものだ。

走行シチュエーション [M]レンジ+ノーマルモード [M]レンジ+Rモード
標準 スポーツ
リセッティング
標準
加速時にレブリミッターが
作動しそうな時
自動的にシフトアップ リミッターが作動する
高いギア(5速や6速)での
高速走行から減速~停止
する時
自動的に低いギアに順次
シフトダウン
シフトダウンするとオーバー
レブになる高回転域からの
マニュアルシフトダウン
しない
シフトアップすると回転が
下がり過ぎる低回転域からの
マニュアルシフトアップ
しない
キックダウン しない
短時間に2回連続してシフト
ダウンパドル操作をした時
時間をおいて1速づつ
シフトダウン
標準より短い時間で
1速づつシフトダウン











◆ワインディングにもベストマッチか
さて、今回はじっくりとスポーツリセッティングを味わってみるために、少し長い距離でGT-Rを楽しむことにした。
例によって大森のNISMO本社でクルマを受取る。NISMOが用意してくれたGT-Rは、09モデルをベースに“NISMOクラブスポーツパッケージ”を全て組み込み、スポーツリセッティングを施したフルNISMO仕様だ。

1脚100万円以上もするリクライニング式のカーボン製バケットシートに身を任せ、一路、箱根のワインディングを目指した。東名高速大井松田付近は例によって右ルートを走る。フルNISMO仕様のGT-Rにとって、このワインディング区間は余裕がありすぎるほど。知らず知らずの内に高い車速領域に入り込んでしまい、自分自身を抑制しなければならない。サーキット専用と謳っている割には、許容範囲にある乗り心地は、第2世代GT-Rで言えば、デキの良いサスキットを装着しているレベル。シャープな動きや正確なハンドリングは、クルマの方からドライバーを刺激してくる。

御殿場インターで高速を降り、芦ノ湖スカイラインを楽しむ。
シフトレバーを<Mレンジ>に入れ、進化した<ノーマルモード>を確認してみる。回転リミッターが作動する直前で、自動的にシフトアップしてくれるから、ステアリング操作に集中できる点がありがたい。ただし、気づかない内にシフトアップしているので、次のコーナーで一段高いギヤになっていることがあり、あわててシフトダウン。だが、これは慣れの問題だろう。シフトダウンのレスポンスは良く、違和感はない。ノーマルの状態では、素早い操作で4速から2速に落とすような場合には3速までしか落ちない場合が多いが、NISMO仕様は素早く2段落としが可能な点は大きなメリットだろう。これはサーキットでも有効だと思う。いずれにしても、芦ノ湖スカイラインでは、手に余る速さであったことは間違いない。

帰りは、富士スピードウェイ脇の明神峠から道志みちを走ることにした。お気に入りのコースだが、車体の大きなR35にとっては特にコース幅の狭い明神峠は少々苦手な部類のワインディング。だが、こうした条件の悪いコースでこそ、エンジンのピックアップの優劣がはっきりと体感できるのだ。明神峠の急な登り勾配でも、R35は軽々と加速していく。特に、(2速か、3速か?)と迷うようなコーナーでも3速のままいけてしまうのだ。NISMOの言うように中低速領域のトルクが太っている証拠だろう。この点に気がついてからは、迷わず1段高いギヤを選ぶことにした。すると実にスムーズに走れるようになるのである。シフトの回数が少ないということは、サーキットのラップタイム向上にも繋がる。イメージ的には、スペックVの“ハイギヤードブースト”が常時作動しているようなもの。自動シフトアップのミッションとの相互作用で、実にスムーズにワインディングを楽しむことができる。

狭い峠道を走っても、R35の車体の大きさや重さを感じなかった点は驚きだ。エンジンレスポンスやステアリングレスポンスが優れているからこそ、ドライバーにそれを感じさせないのであろう。今回、スポーツリセッティングはワインディング路でも非常に有効なことが確認できた。とはいえ、その全性能を味わうには、あまりにもリスクが大きすぎる。やはりサーキットでこそ真価を楽しめるパーツだと言える。

R35スポーツリセッティングは、販売商品ではなくレンタル商品だ。日々進化するGT-Rに対応する上でもレンタル式にする必要があったという。スポーツリセッティング装着中は、NISMOが日産自動車と同様の保証をしてくれる。さらにクルマを売却する際には、元のECMに戻し所定の点検整備を行なうことで、日産の保証が復活する。オーナーにとっては、これは大きなメリットとなるだろう。ただし、装着に際してはノーマルであることが前提。既にチューニングしてある場合はノーマルに戻し所定の点検整備を受ければ、日産の保証を復活させることができる。その際の費用は自己負担となるが、このステップをふめば晴れてスポーツリセッティングを装着することができるのである。

既に300台以上のR35 GT-Rに装着したというスポーツリセッティング。ワンランク上の走りを求めるオーナーには心強いパーツとなることは間違いない。

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