NISSAN GT-R Club Track editionの標準仕様とは?

2010年7月29日、仙台ハイランドレースウェイで行われたクラブトラックエディションの試乗会で、ノバ・エンジニアリングの森脇基恭氏から車両スペックについて説明が行われた。特に車両重量については、カタログ値は1660Kgとなっているが、実際には1630Kg近くまで軽量化されているという。すなわち、基準車の1740kgに対して約100Kgの軽量化が達成されていることになる。これは、走行性能にも大きく貢献する数値といえるだろう。

クラブトラックエディションは、いわばクラブマンレーサー向けのサーキット走行専用車。標準で搭載される装備については、主に安全面と安定して速く走るためのスペックが与えられている。標準スペックの内容については、既に7月31日に公開した当サイトの”車両概要”にも記載したが、ここでは更に細かい説明も加えたい。

実際にデリバリーされるクラブトラックエディションは、2011年モデル(MY11)の基準車をベースに特別架装される。試乗会当日は、2010年モデル(MY10)をベースにした開発車両(シルバー)を試乗用とし、このクルマには一部オプションパーツも装着されていた。それとは別に、撮影用モデル(ホワイト)は正規仕様のクラブトラックエディションとなっているとのこと。
Photo: Yoshio Moriyama


■エクステリア
車高は標準車よりも10mmほどローダウン化され、見た目にも精悍さを増している。フロントタイヤハウス後方には『Club Track edition』のエンブレムが左右に取り付けられ、またCピラーには『THE PRESTIGE CLUB OF GT-R』のステッカーが貼付される。

フロントリップスポイラーは、スペックV同様にブレーキダクト付となり、これにともなってフロントアンダーカバーも基準車とは異なるものが装着される。さらにフロントウィンドウ下部には、カットオフスイッチも装備している。


ボンネットとトランクリッドには、レース用フック(通称ボンネットピン)を装着。サーキットでの高速走行に備え、ボンネットと他ランクの飛散防止が狙いだ。ただし、このフック装着にはボンネットの加工が必要なため、歩行者障害軽減のための「ポップアップエンジンフード」機能は取り外してある。

前後バンパーには、サーキットでコースオフした際に必要な牽引フックを増設している。





■インテリア
クラブトラックエディションのシートは、自由選択となっている。オプションのRECARO製シートもしくはNISMO製クーリングシート。あるいはそれ以外に自分にフィットするシートを取り付けても良いように配慮されている。シートに関しては何も指定しなければ標準のシートが装着されて納車されるのだ。

標準装着されるステアリングホイールは、330φの跳ね上げ式を採用し、乗降時の利便性を確保している。特にオプションの6点式ロールケージをチョイスした際には有効なアイテムだ。それ以外にも、本格的レースマシンのような満足感も得られるだろう。

また、特徴的なのはエアコンを標準装備している点。夏場のサーキット走行ならばエアコンを効かせて走りたいところだ。スーパーGTに参戦するGT-Rにもエアコンは装備している。走るためにはエアコンなんぞいらない!というのは、もはや昔の話だ。さらに、サーキット専用使用が終了し、ナンバー登録を行った際にも助かる装備。

そしてセンターコンソールには、カットオフスイッチと自動消火器のスイッチがレーシーなカーボンプレートに装着される。



ロールバーは標準でリヤ4点式の強固なものが装着されている。が、これもオプションの6点式を選択すればフロントまで伸びてくる。6点式のフルハーネスベルトのアンカーはリヤフロアではなく、ロールバーにアンカーされる本格仕様だ。

フロアパネルが深い位置にあるGT-Rでは、ドライバー用フットプレートの装着は必須アイテム。スーパーGTマシンやスーパー耐久マシン同様のフットプレートが標準で装着されている。

自動消火器のタンクは助手席のフロアに設置される。写真はテストカーなので、消火器の他、各種計測器が装着されているが、実際に納車されるクルマは消火器タンクのみのシンプルな状態となる。


さらに、NISMO製のMFDラップセンサーキットと、データロガーキットを標準装備しているので、マグネットセンサーがコース上に埋め込まれた国内主要サーキットなら、そのままMFDにラップタイムが表示される。また、データロガーキットも標準装着されているので、ドライビングスクールや、実際のレースイベントなので自分自身のドライビングの問題点も把握し易い。



■サスペンション&タイヤ
サスペンションは、スリックタイヤにマッチするよう最適化がはかられている。特に、フロントのキャンバー角をより強くするため、基準車よりも短いアッパーアームが採用された。またビルシュタイン製の車高調整式ショックアブソーバーを採用。スーパー耐久にも参戦したNISMO GT-R RCに採用されたものと同じ減衰力2WAY調整式のダンパーだ。スプリングはいわゆる直巻きタイプではなく純正形状のコイルスプリングを採用。レートは明らかにされなかったが、スペックVのものよりも高いレートを採用しているとのこと。クラブトラックエディションの標準状態での車高は基準車よりも10mmの車高ダウンとなっている。

クラブトラックエディション最大の特徴でもある前後タイヤはダンロップ社製のロングライフスリックタイヤが標準で装着されている。サイズはフロント260/710R20、リヤ290/710R20だ。また、雨天用として基準車用のダンロップ社製ランフラットタイヤも車両購入時にはついてくる。




■ブレーキ
ブレーキシステム自体は、基準車とほぼ同等である。しかし、フロントのブレーキローター径は、これまでの385φから390φにサイズアップされた。キャリパーは従来と同じくブレンボ社製のモノブロックキャリパー。パッドも基準車と同じものを採用している。

その分、冷却面でのチューニングが行われている。エクステリアの項でも紹介したように、フロントのリップスポイラーにはスペックVと同様の冷却ダクトを装着。そこから導かれた冷却風は、アンダーカバーに装着されたアルミ製のダクトを介して巨大な導風版へと導かれ、キャリパーとローターを冷却する。さらに取り込まれた冷却風を排出する工夫も新たに盛り込まれている。フロントタイヤハウス後部には、大きなエア抜き加工が施され、タイヤハウス内のエアをスムーズに抜けるように配慮されている。



■エンジン&パワートレーン
エンジン出力に関しては、500ps以上としか公開されていない。しかしながら、サーキット走行専用のECM(エンジンコントロールモジュール)、TCM(トランスミッションコントロールモジュール)、ABS/VDCユニットが設定されている。これらは、スリックタイヤなどにマッチングがはかられた専用ソフトが組み込まれていることは想像に難くない。最大パワーよりも、エンジンレスポンスの向上やコーナリング時の応答性の向上を狙ったものとのことだ。ただし、この3つのユニットは『THE PRESTIGE CLUB OF GT-R』に入会したクラブ会員限定の無償貸与品。したがって、クラブを退会しナンバー登録の際は返却が必要となる。

ところで、右の写真は2010年モデル(MY10)をベースにしたテスト車のエンジンルームだが、下(左端)のS耐参戦時のNISMO GT-R RCのエンジンルームと比べて、何かお気付きの点は無いだろうか。テスト車のエンジンルームには、エンジン後方のバルクヘッドに沿ってカーボン製のタワーバーの役目を持ったパーツが追加されている。かなり強度のあるカーボンパーツで、写真ではわかり難いが、バルクヘッドに沿ってかなりの点数でボルトで固定されていた。コーナリングスピードの向上にともない、ボディにも手が入ったということかのかもしれない。

エンジン系ではエキゾーストシステムも専用品が投入されている。下の写真では、一見ノーマルのエキゾーストに見えるが、実はクラブトラックエディション専用のサーキット用エキゾーストシステムが装着されている。メインマフラーは廃止され、排気効率の向上とレーシーなエキゾーストサウンドの演出をかねている。

パワートレーン系では、前後のデフにオイルクーラーが装着された。写真は標準装着のNISMO製リヤデフオイルクーラーだ。