当サイトとして最も注目したいのが、ボディーワークだ。日産自動車も、匠の技を盛り込んだと言うだけあって、そのホワイトボディーはかなりの力作。開発責任者の水野和敏氏によれば、ニュルブルクリンクサーキットを7分38秒で走った場合、片輪あたりの入力は約5トンもあるという。当然、これだけの入力が入ればどんなボディーでもたわむ。
 重要なのは、たわんだ後にバネのように元通りに復元するかということだ。もちろんハンドリングを決める重要な要素であるボディー剛性も確保し、衝突安全性も考慮しなければならない。さらに、軽量化も重要なポイントとなってくるのだ。これらの要件を全て満たしたのが、新型GT-Rのボディーというわけだ。
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Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-WORLD.net







スポット溶接の多さが物語る
まず、目を引くのがスポット溶接の多さだ。通常、生産車でこれほど溶接ポイントの多いボディーは見たことがない。レースカーやラリーカーを製作する際には、剛性を高めるためにスポット溶接の増し打ちを行うが、GT-Rのボディーはそれに匹敵するか、むしろそれ以上とも言える造りだ。このままでもN1レースマシンとして使えそうなボディーであるというのが率直な印象。また、各パネルの剛性アップを図るためにつけられたリブもおびただしい数がプレスされている点も見逃せない。














高いサイドシルとボックスフレーム
 写真は運転席側から助手席を見たところだが、ドア開口部下側のサイドシルと助手席足元のボックスフレームが異常に高いところがミソ。グループCカーなどもこのサイドシルにあたる部分がかなり高く造られていた。これらが高いとボディー剛性を高くすることができるのだ。一般的にドイツ車などはこの部分が国産車に比べて高く設計されていたが、新型GT-Rにはドイツ車をはるかにしのぐ高いサイドシルとフレームが与えられているのだ。ただし、サイドシルが高いと乗降性が悪化する。
特に助手席に女性を乗せた場合などは不評を買うことは間違いない。しかし、心配ご無用。GT-Rの場合はその点を2重底にすることで解決している。ご覧の通り、助手席の足元にはジャッキなどの車載工具を納めるスペースができたというわけだ。












リアパネルはアルミダイキャスト製
 キャビンとトランクルームの境にある大きな開口部。ここをいかに蓋をするかが、剛性アップのポイントとなる。通常は、薄いプレス板をクロスに交差させている。R34 GT-Rでは厚めの鉄板がボルトで固定されていた。新型GT-Rの場合は、なんとアルミダイキャスト製のパネルをボルト止めしている。軽量化と高剛性の両立をはかったものと推測されるが、これも見たことがないアイテムだ。さらに高い剛性を持ったパネルにスピーカーを固定することでスーパーなオーディオサウンドも実現したというオマケ?付だ。それにしても、プレスリブとスポット溶接の多さには驚かされる。













複合素材のフロントセクション

 一方、フロントセクションは複合素材の組み合わせで構成されている。まず、フロントのストラットハウジングがアルミダイキャスト製であることに驚かされる。おそらく国産車初の試みであろう。こちらも高剛性と軽量化を狙ったものと推測される。さらにその先のラジエターサポート部はカーボンコンポジット樹脂で製作され、ラジエターファンのサポート部までが一体成形されている。こうした複合素材の組み合わせは、剛性アップはもちろんのことだが、フロントのオーバーハング部分の軽量化を狙ったものなのか?
 また、エンジンルームからフロアトンネル入り口にも剛性の高そうな補強材が溶接されている。今までのクルマは、この部分がプレスのままであり、シワがよった部分でもあった。エンジンを下ろした際にプレスによるシワが見えてしまい、がっかりしたものだ。



工芸品とも言えるボディーだ!
 実際、ホワイトボディーを目の前にすると、その精度の高さに驚かされる。各パネルの合わせ部分にスキマがないのだ。これまでのクルマは合わせ部分にスキマが多く、レースカーを製作する場合は叩いて修正しながら溶接増しを行っていた。水野氏によれば、各パネルの合わせ面の精度はなんと0.1mm以下にしているという。こうすることで、ボディーにたわみが生じてもバネのように復元するのだそうだ。さらに、生産されたボディーは全数が加振試験にかけられ、設計基準に満たないものは廃却するとのこと。生産効率を優先するトヨタでは、まずあり得ないボディーだろう。
 一方、チューニングカーを製作する上で、手をつけにくいのがボディー補強だった。しかし、新型GT-Rの場合は補強の必要はなさそうだ。この点においては日産自動車の言う通り、チューニングの必要はないと言える。これまでのクルマ造りの常識を覆したとも言える新型GT-Rのボディーは、まさに工芸品とも言えるボディーワークだ。このボディーだけでもかなりの価値があるとみた。