その他編



十勝24時間レース参戦の目的は、市販化が予定されているニスモオプション開発とオイル開発の実践テスト。そのマシン造りは、一発の速さよりも、長く安定して走りきることに主眼が置かれているようだ。そうでなければ、ニスモが目的とする有効なテストデータが得られないことはあきらか。「MOTUL NISMO GT-R」では、エンジンやミッションをはじめとする主要コンポーネンツはノーマル。極めて生産車に近いマシンで、24時間をレーシングモードで走り切るためには、無用のトラブルの芽は、あらかじめ摘み取っておかねばならない。一般的にノーマルカーがレーシングモードで長時間走る場合、おうおうにして熱の問題に端を発したトラブルが発生する。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-WORLD.net



そこで、「MOTUL NISMO GT-R」の熱対策はどのようになっているのだろうか。フロント正面の画像を見ていただければお判りのように、インタークーラーはノーマル。エアコンのコンデンサーはもちろん撤去されている。驚いたのは、ラジエターまでもがノーマルであることだ。通常、プロダクションレースカーを製作する場合は、ラジエターは「三種の神器」のように大容量タイプに交換する部分である。それだけ、ノーマルラジエターの冷却性能が優れているという証なのか、実に興味深いポイントである。また、ラジエターやインタークーラーへの導風板は、デキの良いノーマルをそのまま使っている。正面向かって左側の黒いダクトの奥にあるのがエンジンオイルクーラー。ノーマルのオイルクーラーと同じ場所に設置されているが、サイズはひとまわり大き目のものに交換されている。そのエンジンだが、今回参戦する「MOTUL NISMO GT-R」のエンジンは完全なノーマル。とりたててモノ珍しい部位は見当たらないが、そのエンジンルームを見るとテストカーらしくいたるところに計測用のセンサーが張り巡らされている。24時間という長丁場のレースに実戦参加することで、貴重なデータ収集を行おうとしているわけだ。こうしたデータは、将来、ニスモのオプションパーツにフィードバックされてくるに違いない。


ちなみに、ガソリンタンクはノーマルを採用するらしい。容量は71リットル。当然のことながらクイックチャージ式の給油口は装着されていない。勝つための参戦であれば、大容量の安全燃料タンクにクイックチャージ式給油口の装着は必須であろうが、今回はその目的がニスモオプションのテストにある。巨大な安全燃料タンクをトランク内に設置すると、重量配分が変わってしまう。そこで、その結果、走行特性が変わってしまうことを避けるための処置と見るべきだろう。

足回りに目を移すと、ホイールはニューデザインの20インチ6本スポーク。純正ホイールと同じく、レイズエンジニアリング製のアルミ鍛造1ピースホイールだ。一見、TE37風に見えなくもないが、微妙にデザインが異なる上に可能な限りの肉抜きが施されているのがわかる。余談だが、レースメカニックによれば、6本スポークはレース中のタイヤ交換の際にもホイールを掴みやすいのだという。こんなところにもニスモらしいコダワリを感じさせてくれる。こちらはニスモ製オプションとして販売予定の製品だ。
また、サスペンションはビルシュタイン製のワンオフの試作ダンパーが装着されている。全長調整式の車高調整キットで、減衰力も可変タイプのようだ。ビルシュタイン製の減衰力調整式キットは初めて見るシロモノだ。こちらは、残念ながら市販予定はないらしい。


(→ニスモフェスティバル:プロダクションカー記事にリンク)

24時間という長丁場の実戦テスト。NISSAN GT-Rにとっても初めての大きな試練。はたしてどんなドラマが待ち受けているのか。