最高出力480馬力、最大トルク60kgm。当然のことながらRB26DETTをはるかに上回る性能を持っている。最高出力の発生回転数こそ、RB26DETTよりも400回転ほど低い位置にあるが、最大の関心事は60kgmという強大なトルクの発生回転数である。3200回転から5200回転という幅広いレンジで発生させているのだ。そこには5年の間に進化した様々な技術を投入することでこうしたエンジン特性を得ているわけだ。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-WORLD.net



2次エアシステムの導入
 ラリーカーなどでは以前から使われていた2次エアシステム。アクセルオフから再度踏み込んだ際のタービンレスポンスを向上させるために使われていた技術だ。これが新型GT-Rにも採用され、低負荷領域から40kgmという高トルクを発生させている。
 さらに環境性能にも大きな貢献をしている。昨今の環境基準をクリヤするためには、エンジン始動直後の排ガスをクリーンにする必要がある。そのためには、できるだけ早く触媒温度を上げ浄化性能を活性化する必要があるのだ。ご存知の通り、ターボは排気の熱エネルギーを変換する装置。つまりターボを通過することにより排気温度が低くなってしまい、エンジン始動直後に触媒を活性化できなかった。これが、ターボエンジンが衰退しNAエンジンが主流となった理由の一つなのである。そこで考案されたのが、2次エアを導入し、未燃焼ガスを燃焼させ意図的に排気温度を上昇させることで早期に触媒を活性化させる手法である。インプレッサなどもこうした技術を使い排ガス基準をクリヤしてきた。新型GT-Rにもこの技術が応用され、平成17年度排出ガス50%低減レベル(U-LEV)を達成、ターボを搭載した新世代のハイパフォーマンスカーとして誕生したのだ。

新規開発のブロック
 VR38エンジンは、NISMOが発売したフェアレディZ 380RSに搭載されたVQ38エンジンとボア・ピッチやバンク角が同じため、一見VQの派生にも見える。だが、全くの別物と見るのが正しい。
 まず、シリンダーにはスチール製のライナーが装着されていない。熱伝導率は、スチールよりもアルミの方が良い。つまりライナーレスにすることで燃焼室周辺の水冷却が効率よく行えるというわけだ。この結果、高温な燃焼が可能となり、通常走行時は理想空燃比で走行することできるようになった。加えて環境性能も向上したということだ。もちろん、高温燃焼が可能ということは高出力化にも繋がっているのだ。
 またシリンダーブロックは、ドライデッキと呼ばれるタイプ。通常のシリンダーブロックは、水穴、オイル穴のほかにシリンダー周辺に肉抜きのような穴が開いている。しかし、新型GT-Rのシリンダーブロックには水穴とオイル穴のみが設けられている。つまり、剛性が高いシリンダーブロックということが伺える。この技術も、レーシングフィールドからのフィードバックなのだ。

マニホールド一体型ターボ
 さて気になるターボだが、エキゾーストマニホールドと一体型というチューナー泣かせのシロモノだ。従来のターボはマニホールドとターボをフランジで接合するタイプだったのでターボのみの交換が可能であったが、新型GT-Rではそれができない。
 その一体型ターボ採用の理由だが、熱容量の低減と軽量化が目的の一つだったとのことだ。先にも述べたようにターボとは排気の熱エネルギーを変換する装置。と言うことは、ターボに至る途中で余計な熱を奪われないようにすることが、効率良くターボに仕事をさせることに繋がる。従来型のターボで言えば、分厚いフランジがその余計な部分にあたる。そこでフランジを省いたというわけだ。
 第2に、ターボのレスポンスを重視した。燃焼室に近ければ、それだけレスポンス良くタービンを駆動することができるからだ。したがって、新型GT-Rのターボはかなり燃焼室に近い位置にある。フランジ接合ではココまで近づけることはできなかっただろう。
 第3に、環境適合の問題だ。先にも述べたがエンジン始動直後に触媒を活性化させなければならない。そのため触媒位置もできるだけエンジンに近い位置に設置したいわけだ。
 こうしたレイアウトを可能にした技術背景には、理想空燃比で燃焼した1000℃近い排気温度に耐えられる耐熱鋳鋼など新素材の存在も見逃せない。
 さて、気になる過給圧は、通常の表現で言えば0.75barだ。ただし、気圧や気温といった環境変化にも常に安定した出力特性を得るために、電子制御で過給圧をコントロールしている。

潤滑系にも進化あり
 VRエンジンには、潤滑系にも大きな進化が見られる。RBオーナーには、オイル潤滑について苦労した方も多いはずだ。オイルの片寄りを防止するためにバッフルプレートをオイルパンに装着したり、空冷式のオイルクーラーを装着など、特に走り屋系のオーナーにとっては必須アイテムだったはずだ。新型GT-Rでは、これらの潤滑系の対策が盛り込まれている。1.8Gの旋回Gにも、安定したオイル供給を可能とするラテラルウェット&ドライサンプシステムを投入。オイルクーラーも標準装着されているのだ。また、V型エンジンのターボは、低い位置の装着されるためスカベンジャーポンプで強制的にオイルを吸い出すなどの機構も盛り込まれている。
 ちなみに、使用するオイル量は6.5リットル。オイルクーラーを装着していることを考えれば常識的な範囲だ。