12月8日発売のGT-R 09モデル(プレミアムエディション)の見積書
~2008年GT-Rを振り返る~

12月8日、GT-Rの2009年モデルが発表・発売される。以前から様々な噂や憶測がとびかっていたが、サスガに現実感のある情報が入ってくるようになった。
R35 GT-R発売から、ちょうど1年。09モデルまでの道程を振り返ってみた。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net/Nissan/General Motors




◇ 2007年10月24日 R35 GT-Rを発表
ニュルのタイムは7分38秒。ただし、コース上にはいくつかのウェット路面があった。
水野氏はこのとき、春になったら再度タイムアタックすることを公言。
また、GT-Rは発表後も常に進化を続け、同時に1年後にスペックVを発売することも語った。
(→関連記事「2007東京モーターショーレポート」




2007年10月24日、東京モーターショーでGT-Rを発表


発表直後から水野節が炸裂。その様子はさながら自己啓発セミナーだ。
◇ 2008年5月 量産車最速タイム!
ポルトガルで行われたイベントNISSAN360でニュルのタイムを公表
7分29秒で、量産車最速タイムだ。これに関する水野発言の骨子は

1. アタックは4月の16、17、18日の3日間で行った。時間は、毎日、インダストリーの終了した17:30~19:30。
2. 結果は、初日に29秒台。2日目に29秒0。3日目はコース上に砂利があり30秒ちょっとだった
3. アタック車両は、ダンロップタイヤを装着した基準車そのもので、全くの生産仕様車

というもの
このタイムは、7月7日から販売される北米仕様により叩き出された。北米向けの開発でGT-Rはさらに進化したと説明。その内容は北米の高速道路の特徴であるボビング路での乗り心地・操安性を煮詰めた(日本では中央高速八ヶ岳付近のような路面)。その結果、乗り心地も向上し、ニュルのタイムが大きく向上したという。
具体的な変更点は、

1. スプリングレートをホイール端レートで0.1kgm高くした。ただ、この変更は、生産管理の中央値を0.1変更した程度の内容で仕様変更と言うほど大げさなものではない。それだけ、GT-Rの生産精度が高くなっている証拠。一般的には±10%が生産誤差だが、GT-Rの場合、±3%に留めているから可能となったとのこと
2. これに伴い、ダンパーの減衰力も変更
3. ミッションマウントのゴム硬度をアップし、官能的なサウンドを演出
4. ブレーキパッドの鳴き対策を実施

というもの。

ニュルのラップタイム競争にアメリカからの刺客が現れた。
また、ボディの生産精度も向上し、レーザー計測器の誤差を越える精度でボディ製作が可能になったため、上記変更を行うことで性能が向上したと説明した。
GT-Rはグローバルで同一仕様のクルマ(フェアレディZも同じ)であるため、国内仕様も北米仕様と同一のものに変更された(一説には4月生産分から変更されているという)。
実際、自動車雑誌の最新GT-Rインプレッションを見れば、乗り心地を含めて性能向上した様子がうかがえる。水野氏の当初の発言どおり、GT-Rは僅か半年の間に進化したわけだ。
(→関連記事「ニュル7分29秒(ダンロップ)と、小変更」)

【トピックス】コルベットZR1がニュル最速記録を更新
アメリカのコルベットZR1がニュルをアタック。GT-Rの持つ量産車最速記録を塗り替えた。このときのタイムは7分26秒。およそGT-Rとは正反対のコンセプトを持つクルマの台頭に「ターゲットは、あくまで欧州スーパーカー。アメリカの動向には興味がない」と水野氏はそっけない。
(→関連記事「"ニュル"最速戦争勃発! OHV+スーパーチャージャーのコルベットZR1が参戦」)




スポーツパーツの耐久テストに専念した24時間レース。来年以降はGT-RのGT-Rたる所以、「勝ち」に行くレースが見られるのか。
◇ 7月 十勝24時間レース
2007年7月、GT-Rが十勝24時間レースFIAクラスにNISMOからエントリーした。量産車ベースのレーシングカーとしては初めてのマシンだけに注目度は高かった。NISMOでは、参戦の目的を9月に発売を予定していたスポーツパーツの最終テストとしていた。しかし、ベールを脱いだマシンには、スペックVと同じリップスポイラーや、ホイールが装着されており周囲を驚かせた。
(→関連記事「十勝24時間特集 第16回 戦い終えて」)








セットで560万円というプライスタグがつけられたNISMOクラブスポーツパッケージ。十勝24時間レースからのフィードバックやスペックVの装備の先取りも。
◇ NISMOクラブスポーツパッケージ発表(8/29)
この夏に発表されたNISMOクラブスポーツパッケージは、フルキットで546万円とこれまでの常識を覆す驚きの価格で登場した。その中には、なんと発売前のスペックVとのコラボレーションパーツまで含んでいたのだ。ホイール、マフラー、そしてバケットシートがそれだが、特にホイールやシートについては、まさにニュルでスクープされたスペックVが装着していたものと同じ。日産・ニスモの大胆な戦略には驚かされた。また、パッケージに含まれる専用タイヤもトレッド面のデザインまで変更するというこだわりようだ。
ニスモによれば、このクラブスポーツパッケージは、コンプリートカーを造るようなイメージで開発を進めてきたという。実際、GT-Rファミリーの中での位置づけは、基準車と将来登場するスペックVの間を補完する役目を担っている。「サーキットに置きっぱなしする」ような非日常的な走り指向のスペックVと、日常的に使える基準車の中間的存在だ。つまり、日常性を有しつつ、サーキットを楽しみたいオーナー向けのパッケージだ。したがって、NISMOクラブスポーツパッケージは、当初より水野氏の計画に組み込まれたプロジェクトであったというわけだ。
(→関連記事「NISMO再始動!『R35 GT-Rに込めた狙い』 第1回」)


ニュルではアメリカ勢が熱い。インターネットのフォーラムなどでも、アメリカ人はGT-Rよりアメ車が速いことに誇らしげだ。
【トピックス】ヴァイパーACRがZR1のニュル最速記録を破る
アメリカのバイパーACRが、ニュルのタイムを更に更新。7分22秒というタイムをマークした。しかしながら、このバイパーは愛好家たちの手によるアタックであり、オプションパーツなども多数装着されていたことから、あまり大きな話題とはならなかった。
(→関連記事「Motor Trend:Viper ACRがニュル最速タイムを奪取!」)








10月~3月までは雪や凍結のためニュルでのテストはできない。9月が2008年のラストチャンスだった。
◇ 9月 ニュルテスト
9月になると、日産の開発チームは再びニュルでテストを行っている。09年3月から発売を予定している欧州仕様のテストがメイン。その他、NISMOクラブスポーツパッケージ車やスペックVのテストの模様などがスクープされ、各誌の紙面を賑わした。
現段階では、そのタイムは公表されていない。しかし、直近のトークショーの中で、水野氏は「1年で10秒以上短縮しちゃうからね」と余裕の笑顔を見せていただけに期待は持てそうだ。
(→関連記事「GT-R スペックV 最終テスト?」)





かのポルシェが自らGT-Rを購入。ニュルで思うようなタイムを出せずに疑義を呈した。
【トピックス】 ポルシェのクレーム
9月末になると、ポルシェがGT-Rの出した7分29秒に対して疑義を申し立てた。ポルシェは独自に北米仕様のGT-Rを購入。これをニュルに持ち込みテストしたところ、7分54秒であった。この結果から、ポルシェは日産がSタイヤを使用した、あるいは特殊な仕様のクルマでアタックしたのではないか?という疑いを持ったというわけだ。このポルシェ911のチーフエンジニアの言葉が海外サイトに掲載された。日産は、すぐさま証拠のビデオもタイヤもある。場合によってはポルシェのドライバーにドライビングレッスンを施しても良いと反論。ネット上で大きな話題となった。
この件に関し、水野氏は「甚だ迷惑な話」としながらも次のような説明をトークショーで行った。

・ タイヤはダンロップではなく、BSタイヤの方を使っていた。
・ ポルシェが購入したGT-Rは北米仕様であり、ナラシや点検・各種調整などをしないまま、ニュルに持ち込んでいた。
・ 日産開発陣がニュルでテストをしていたところ、ポルシェのスタッフが見てくれということでGT-Rを持ち込んだ。
・ 日産側で現車を確認したところ、クラッチの調整もされておらず、シフトチェンジに1秒近くかかっていた。これではタイムを出せないとのこと。
・ また、アライメントやブレーキなどのアタリも出ていない状態だったため、日産側で各種調整を行ってあげた。


NISMO大森ファクトリーもリニューアル。その記念イベントでポルシェ騒動に息巻く水野氏。
また、水野氏は説明しなかったが、ポルシェのGT-Rは北米仕様のため出力的にも国内仕様よりも劣っているものと思われる。ご存知のように、北米のガソリン事情は悪くオクタン価が低い。このため、エンジンコンピューターのセッティングもかなりの安全マージンをとったセットとなっているためだ。
さらに「7分29秒を出したクルマは、ドライビングレッスンでも使っているクルマで、受講生も乗っているもの。特別なクルマではない」と水野氏は付け加えた。
この件、特に結論が出たわけではないが、ポルシェがGT-Rをライバルとして認めた事実といえよう。
(→関連記事「ポルシェに売られたケンカ」)




「まだ教えなーい!」と水野氏トークショー。


製造業にとって生産精度の向上や品質の向上への取り組みは当然の企業努力だ。
◇ 2009モデル
現在、最も注目されているのが、09モデルとスペックVであろう。
10月6日より、GT-Rの国内受注は一時停止されている。受注再開は12月8日。すなわち、09モデルの発表・発売からだ。
その09モデルだが、既に報告したように約10%の値上げが同時に行われる予定だ。詳しくは、当サイトの09モデル関連の記事を参照されたい。
スペック的にも、大小の変更点がある。その中でも、特に注目されるのが、エンジンとサスペンションだろう。
ちなみに、欧州ではクルマの燃費を云々というよりは、ワンタンクでの航続距離が評価されるらしい。要するに1回の「満タンでどこまで走れるか」というところが重要らしいのだ。そこで、欧州仕様となる09モデルではタンク容量を約3リットル拡大、更にコンピューターのセッティングを見直し燃費の改善を行い、航続距離を延ばしたということらしい。
以前、水野氏は「コンピューターのセッティングも、もっと精度を高めれば燃費はあがるし、それにともなってパワーもあがるよ」と語っていた。横浜工場で手組されるエンジンの製品精度が高まったことにより、より精度の高いコンピューター制御が行えるようになったということであろう。
ちなみに、最新の情報では485馬力という数値がほぼ確定的だ。
(関連記事:「R35 GT-R 2009モデル情報」)







2009年3月にはヨーロッパで発売予定だ。初年度分は売り切れとの情報も。
サスペンションについては、「新構造ショックアブソーバーの採用」とあるがどのような構造に変更するのか興味がつきない。内部のバルブ構造の変更なのか、あるいは別タンク式にするのか、車高調になるのかなどと想像力をたくましくすればキリがないが、現実的なところではバルブ構造の変更といったところであろうが、どうなるか。
また、「フロントバネレートのアップを含むサスペンションセッティングの改良」となっている点も興味深い。欧州仕様のフィードバックであることは間違いないであろうが、最近のGT-Rのサスペンションセッティングを見る限り、フロントのバネレートは比較的高めが良いようだ。それはNISMOクラブスポーツパッケージの18.5k/9.6kという前後配分にも現れている。
(関連記事:「R35 GT-R 2009モデル追加情報」)

これらの結果、ニュルのタイムどのくらいになるのか非常に気になるところだが、来年4月には、再びニュルのテストを行うと水野氏は語っている。12月8日の09モデル発表時に9月のテスト結果が公表されるのか、それとも来年の4月のアタックまで待たされるのか。

そしてこの後、欧州や北米などの主要地域以外の市場であるGOM地域向けの仕様が待っている。GT-Rの進化は09年も止まることはないだろう。