聖地探訪Ⅰ ~プリンス&スカイライン・ミュウジアム~

スカイラインファン、あるいはGT-Rファンが真っ先に訪れる聖地といえば、プリンス&スカイライン・ミュウジアムではないだろうか。ここでは、ミュージアムが主催する様々なイベントやオーナーズクラブによるオフラインミーティングなども頻繁に行われているという。わたしの場合、日頃の忙しさにかまけて、残念ながら、というか恥ずかしながら過去にこの地を訪れたことがなかった。そこで、「聖地探訪シリーズ」とスタートするにあたり、その記念すべき第1回目をプリンス&スカイライン・ミュウジアムにしたのである。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net



中央フリーウェイ

希少な初代スカイラインも2台展示
プリンス&スカイライン・ミュウジアムは、長野県のほぼ真ん中にある諏訪湖の西に位置する。中央道岡谷JCTから長野道方面に向かい、最初の岡谷ICで降りれば、5分ほど。なかなかアクセスは良い。
9月初旬、スタッフとともに調布ICから中央道に乗り岡谷ICを目指した。

――余談だが、個人的には変化に富んだ中央道が気に入っている。適度な曲がり具合が実にいい。特にGT-Rのようなクルマなら、高尾山付近から大月あたりまでのワインディング区間で心地よいハンドリングを楽しむことができる。一方、笹子トンネルの中や、甲府の先、須玉ICから諏訪南ICあたりまでのコンクリート路面では、サスペンションの良し悪しもチェックできる。特に上り方向の路面はウネリが大きく、デキの悪い車高調では、おそらく80キロ以上はだせないであろう。路面のウネリと共振し、車速を上げれば上げるほど、車体の上下動が激しくなり、運転手は車の中ではねまくるはずだ――

道中、クルマの流れはスムーズで、当初の予定よりも早く到着してしまいそうになった。そこで、諏訪ICで降りることにした。ちょうど昼時ということもあり、諏訪湖を見物がてら、なにか旨いものでも探そうということになった。

諏訪湖
諏訪湖は、長野県中部の観光地だ。夏には大花火大会が催され、冬は全面氷結するためワカサギ釣りのメッカでもある。特に寒い冬には、膨張した氷が割れてせり上がる御神渡り(おみわたり)と呼ばれる珍しい自然現象も見られる。ただ、最近は地球温暖化の影響か、全面氷結する年が少なくなっているという。クルマ好きにとっては、ちょっとばかり耳の痛い話だ。岡谷市の対岸の東側には上諏訪温泉があり、ここには大きな間欠泉が噴出している。その近くには、昭和初期に建てられた洋館風の温泉施設「片倉館」があり、ここの千人風呂がおすすめだ。浴槽は100人が同時に入れるというだけあって、とにかく大きい。しかも水深が1.1mもあり、ちょっとしたプールのような印象だ。底には玉砂利が敷き詰められていて、これが実に気持ちいい。近くには美味しい蕎麦屋さんもあるので、時間に余裕があれば、是非とも立ち寄りたい場所だ。(片倉館ホームページ: www.katakurakan.or.jp

今回は、湖の南側を走るルートを選び、岡谷市を目指した。ところが、これが大失敗であった。途中、諏訪湖名物でも食べようということで探しながら走ったのだが、南側のルートにはそれらしきお店がないのである。上諏訪温泉、下諏訪温泉を経由する北側ルートを走れば良かったと後悔したが、時すでにおそし。結局、名物にありつけず岡谷市に到着してしまった。

名物を食す
名物が食えそうなお店を物色したが、見つからない。それもそのはず、我々は諏訪湖の名物が何であるかも調べずにきたのだから、そもそもそんなものが見つけられる訳がないのである。とはいえ、ファミレスで食事をするのも、はるばるきた甲斐がない。そこで、茅野に住む知人に電話をして聞いてみた。「諏訪湖で美味しいもの食べたいなら鰻だよ。今、何処にいる?」と言うので、岡谷駅の近くにいることを伝えると「それなら、諏訪湖の端に釜口水門というのがある。その水門のほとりに2件の鰻屋があるから、そこならどっちでも美味しいよ」と教えてくれた。早速、ナビに釜口水門をインプットして向かうと、確かに鰻屋が2軒ある。我々は、ひなびた雰囲気の方のお店をチョイスし、暖簾をくぐった。座敷にあがり店内を見渡すと、「三河産うなぎ」の文字が目に入る。あれっ?と思ったが、世間を騒がしている中国産でないだけマシか、ということでうな重を2つ注文。ところが、コイツがなかなか出てこない。イライラしていると、「当店は、注文を受けてから焼き上げますので、お時間がかかります」という貼り紙がある。なるほど、と妙に納得して待つこと30分、ようやく目的の名物にありつけた。

ちょっと濃い目の飴色に焼きあがった蒲焼は、見た目にもしっかりと味がついていそうで食欲をそそる。まずは、がぶりと一口。旨い。表面はパリっと焼き上がり、中の肉は引き締まっている。味も期待通りのしっかりとした好みのもの。となれば、箸の動きも俄然滑らかになり至福のひとときは瞬時に終わる。御腹も心も大満足だ。

ご存知のように、蒲焼には流派が二つある。関東流と関西流だ。関東流は鰻を蒸してから焼き上げるが、関西流は直に焼き上げる。一説には、関東では一度蒸すことで脂が落ちるので、太めの脂の多いものを使うが、関西では細めの身の締まった鰻を使うという風に素材も違うらしい。ここ諏訪湖のうな重は、まぎれもなく関西流。わたしは東京生まれの東京育ちだが、実は関西流の方が好みだ。

ところで、鰻を食うたびに疑問に思うのだが、何故、関西流と関東流で鰻の食べ方に違いがあるのか。今回、釜口水門で鰻を食べてこの答えを見つけた気がする。一般的に江戸っ子は気が短いとされている。したがって、直焼きの鰻を待っていられないのではないか。それ故、あらかじめ蒸した鰻を焼くことで調理時間を短くした、と言うのが勝手な推論だ。残念ながら、当方は食の専門家ではないので正確なところはわからない。が、機会があれば調べてみたいと思っている。同時に、東西の鰻の焼き方の境界線はどこにあるのかという点にも大いに興味がある。いずれにせよ、鰻の食い方ひとつでも西と東では違うのだから、日本は狭いようで広い。となれば、クルマのチューニングにも東西の違いがあって当然であるし、むしろその方が楽しいと思うのだ。

プリンス&スカイライン・ミュウジアム

ミュウジアムは諏訪湖を見渡す鳥居やまびこ公園内


4月から10月までオープン。降雪のため冬季は閉鎖される


管理課長の清水一夫さん


来館者からの感謝のお便りが壁一面に
プリンス&スカイライン・ミュウジアムは、諏訪湖を一望の下に見おろすことができる鳥居やまびこ公園内にある。住所は、長野県岡谷市字内山4769-14。公園は岡谷市振興公社が運営する市民の憩いの場だ。したがってプリンス&スカイライン・ミュウジアムも同公社の運営によるもの。そこで、同館の管理を行っている岡谷市振興公社プリンス&スカイライン・ミュウジアム管理課長の清水一夫さんに、いろいろとお話をうかがった。

プリンス&スカイライン・ミュウジアムは、当初、水族館としてスターとした。ご存知のとおり、岡谷市は山国で海がない。先々代の市長さんが、やまびこ公園を造る際に、市内の子供たちに海の魚を見せてあげたいとの発想から水族館を造ったそうだ。というのも、その当時は今ほど交通の便が発達しておらず、子供たちが海の魚を見るためには、東京や江ノ島、あるいは日本海側の直江津にある水族館まで行かねばならなかったためだ。こうして、やまびこ公園に水族館が造られたのだという。しかしその後、長野オリンピック開催を期に交通網が一気に充実。長野道や中央道が開通し、東京方面や直江津方面へは、クルマで2、3時間で行けるようになった。このため水族館のニーズは急速に落ち、最終的には運営費もかかるため閉鎖したとのことだ。
実は、先々代の市長さんとスカイラインの生みの親でもある櫻井眞一郎氏は、以前から親交があったそうだ。お二人の間で「スカイラインの博物館ができたら良いね」というところが、事の発端らしい。そこで、4~5年閉鎖されていた元水族館の建物を再利用するという計画が浮上し、プリンス&スカイライン・ミュウジアムとして1996年4月に再オープンしたというわけだ。

同館の展示車両は常時30台くらい。地下の展示場には、初代スカイラインからV35スカイラインまで、GT-RではR35を除くほぼ全てが展示されていた。その他、レース車両やプリンス自動車時代のトラックやグロリアなども展示されている。これらの展示車両は、個人所有の貴重なクルマのほかに、日産自動車の記念車も含まれているそうだ。また、1階には懐かしいスカイライン関連グッズやミニカーも展示されている。特に、ミニカーはスカイラインだけでもこんなにあるのかというほどの数量で、これには驚かされた。

また、イベントは、春・夏・秋の年間3回行われているそうで、これらのイベントには櫻井眞一郎さんをはじめスカイラインゆかりの方々がお見えになるとのこと。ファンにとっては、貴重なお話をうかがうことができるチャンスとなっているのだ。こうしたイベントは、5つのオーナーズクラブの協力で実現しており、全国でも珍しい官民一体となった博物館といえよう。
ただし、やまびこ公園は標高1000mほどあり、冬の間は雪に閉ざされる。そのため、同博物館の開館期間は、毎年4月から11月までとなっている。今年は、11月16日が最終日とのことだ。

また、秋のイベントは来週10月12日(日)に行われる。ハコスカ40周年記念ということで、伊藤修令氏をはじめ開発に関わった3名の方によるトークショーが行われる予定だ。

来週末といえば連休。温泉そして鰻と諏訪湖の観光を楽しみつつ聖地を訪問されることをおすすめしたい。スカイライン系オーナーはもちろんのこと、R35オーナーにとっても愛車のルーツを探る旅になるはずだ。

Link: プリンス&スカイライン・ミュウジアム