久しぶりに、ニスモから駆動系パーツの大物が登場する。一説によれば、3年近くの開発期間を経て、ようやく世に問えるというカーボンLSDだ。

ニスモは、以前からGT LSDと名づけた機械式LSDシリーズを展開してきた。これは、いわゆる多板式クラッチによるLSDだが、従来のタイプは、金属プレートに窒化処理を施したスチールプレートを採用していた。今回のカーボンLSDはこの多板クラッチの一部にカーボンプレートを採用した最新モデルだ。

スチールプレートの場合、クラッチプレート間で油膜切れを起こし易く、これがガキガキ、ゴキゴキといったLSD特有の音の原因となっていた。このため、プレートに油膜切れを起こし難いような溝を設けているのだが、それでも連続走行などで高温になった場合などには音を発生してしまう。

一方、カーボンプレートの場合、カーボン素材自体が潤滑性を有する上に、カーボン繊維にオイルが浸透する。このため、スチールプレートよりも油膜切れを起こし難く、圧倒的に音が少なく、リニアな特性を持っているのが特徴だ。さらに、温度変化にも強く、あらゆる温度領域で安定したLSD効果を得ることができるという。






さて、実際にカーボンLSDを装着した車両をサーキットで試してみた。試乗車は、LSDの効果がわかり易いFRのZ34 バージョンニスモ。まずは、ノーマルのビスカスLSDでコースイン。

ビスカスLSDの場合、コーナーで多少荒いステアリング操作やアクセル操作をしても、リアが急激にスライドすることはなく、よく言えば安定している。機械式LSDとは大きく違うところだ。一方、タイトコーナーでは、立ち上がりでリアの内輪が空転してしまい思うようなトラクションが得られずタイムをロスする。とはいえ唐突な動きがない分、初心者には扱いやすいといえるだろう。

ビスカスLSDの感触をつかんだ後、同じクルマでカーボンLSDに交換、再びコースイン。 大きめのコーナーで、従来の機械式LSDならリアが滑り出すようなステアリング操作やアクセル操作をしてみるが、容易にはテールスライドが発生せず意外なほどクルマは安定している。このあたりが従来の機械式LSDと異なるフィーリングだ。

また、タイトコーナーではターンインで機械式LSD特有の抵抗感がなくスムースにコーナーに入ってしまう。まるでLSDが装着されていないような錯覚を覚えるほどだった。それでいて、立ち上がりは内輪の空転もなくシッカリとトラクションがかかるあたり、やはりLSDが装着されていることを実感する。

その後、影山正美選手がLSDの温度を限界まで上げる意地悪テストを行った。その直後に再び試乗。今度は駐車場でハンドルをフルロック状態でユックリと旋回させてみる。従来の機械式LSDはこういう状況で音がでたのだが、ゴキゴキ、ガキガキといった音は相変わらず出ない。さらにアクセルを微妙に踏み込むとロックしてタイヤを引きずる。続いてそのままクラッチを切れば、抵抗感なくスルスルと惰性で旋回する。つまりフリーになっているということ。確かに温度変化にも強く、スムースなロック&リリースが行われているLSDであることが確認できた。

この感触はどこかで味わったことがあると思ったら、かつてニスモがグループCカーなどに装着していた、日産オリジナルのオリフィスLSDと同じ感触であることに気づいた。オリフィスLSDの優位性は、当時世界的にも認識されていて、F1のマクラーレンやインディーカーなどからもオファーがあったというスグレモノだ。その最大の特徴が、温度変化が少なく、高いトラクション性能とリニアなLSD効果にあった。


今回のカーボンLSDの効き味はまさにオリフィスLSDと同じ。1年後には、サーキットを走る日産車の定番LSDとないっているのではないだろうか。

第2世代GT-R用の発売はもう間もなくとのこと。