クラッチ

油圧コントロールバルブ
2010年7月30日、日産がR35 GT-Rのトランスミッションの修理を開始すると正式に発表した。それによるとクラッチアッセンブリーと油圧コントロールバルブの部品交換による修理事業だという。R35 GT-Rオーナーにとっては朗報であり、既に多くのオーナーの知るところとなっているようだ。特に、初期型の07モデル(MY07)のオーナーにとってはありがたい展開だろう。「07モデルはミッションが弱い」というのが定説になっていて、中古車市場でも人気がなかった。R35 GT-Rの中古車を探す人は、まるで07モデル(MY07)のミッションが機械的に破損するかのようなこの風説によって08モデル(MY08)以降を指定する例が多いという。このため、07モデル(MY07)の中古車相場はかなり下がってしまったのが実情だ。

R35 GT-Rのミッショントラブルについて、当サイトでは何度か報告してきた。その内容をおさらいすると、日本国内で発生しているミッショントラブルの大半は、大きく2つ。まず、奇数段あるいは偶数段のクラッチをを動かしているピストンのオイルシール破損だ。どちらかのオイルシールが破損することで油圧がかからず、破損したオイルシールの奇数段もしくは偶数段のシフト操作ができなくなるというトラブルだ。2つ目は、6段あるギヤのシフトフォークを操作する油圧コントロールバルブだ。シフト位置を検知するためのマグネットに金属粉が付着しバルブ自体が固着してしまう。このため、固着したバルブのギヤにシフトしたままになってしまうというトラブルである。このほか、発生件数は少ないがフロントドライブギヤを固定しているCリングが外れるトラブルも発生はしている。

今回、日産が展開するミッション修理の内容は、主に先の2件のトラブルに対応するものだ。クラッチのオイルシールトラブルに対してはクラッチのアッセンブリー交換。油圧コントロールバルブについてもアセンブリー交換での修理となる。問題は保証対象外となった車両も修理してくれるのか?という点だ。7月末に行われたクラブトラックエディション試乗会の会場で水野和敏CVE&CPSに聞いてみた。



違法改造でないチューニング車なら修理する

「他社のマフラーを装着しちゃったとか、リミッターを解除しちゃったというクルマのミッションも修理しますよ。むしろ問題なのはそういうクルマでしょう?」と水野氏はいきなり核心にふれてくれた。確かに保証が有効な車両であれば、ミッショントラブルが発生しても保証で対応可能。水野氏が言うように何がしかのチューニングをして保証対象外になったクルマが問題なのだ。

では保証対象外の車両とはどのようなクルマなのだろうか。以下の2点があげられる。
■何がしかのチューニングを施した車両で、コンピューターの変更やリミッターの解除。あるいはアフターマーケットのマフラー装着や車高調整式サスペンションの装着など多岐にわたる。ただし、NISMOのスポーツリセッティングやノルドリンクのサスペンションキットなどは「GT-R特別指定部品」であり、事実上保証は継続されているので問題はない。ここで問題となるのは「GT-R特別指定部品」以外のアフターパーツ装着車ということになる。
■チューニングなどの改造は行っていないが、サーキット走行をした後に所定のメンテナンスをNHPCで行っていなかった車両。NHPCでメンテナンスを受ける前にミッショントラブルが発生してしまった。またはサーキットの帰り道にトラブルに見舞われてしまったというまことに運の悪いパターンだ。

今回の日産が展開するトランスミッションの修理事業では、上記のような保証対象外となった車両のミッションも修理してくれるというから安心だ。ただし「車検の通らない違法改造車はダメですよ!」と水野氏は念を押す。車高が9cm以下であるとか、排ガスや騒音が国の定める基準値以下の場合などが、いわゆる違法改造にあたるから注意して欲しい。もしも違法改造車であれば、270万円の新品ミッションを自費で購入しなければならないのだ。


修理費用は70万円以下を予定

気になる修理費用だが、水野氏は「70万円以下でやれるようにしたい」と語っている。日産自動車がやるとなれば、それなりにユーザーにとってメリットのある価格設定になるようだ。正式には9月の修理事業開始の頃にインフォメーションされるだろう。

さて、実際にミッションの修理を行うのは以下のNISSAN GT-R特約サービス工場3社である。

■NISMO大森ファクトリー: 東京都品川区南大井2-10-6 TEL: 03-3763-3120
■ノバ・エンジニアリング: 静岡県駿東郡小山町大御神220-1  TEL: 0550-78-0329
■ノルドリンク: 埼玉県入間市宮寺2723-8  TEL: 04-2935-2135

修理の受付は全国の日産ハイパフォーマンスセンター(NHPC)でも可能だ。この展開を受けて、現在3社ではミッションの修理作業を行うクリーンルームの設置などの準備を行っている。ただ、修理を行う3社はいずれも関東の首都圏近郊だ。例えば地方のユーザーの場合とうするのか。トラブル車両を輸送し、車両の持ち込み修理になるのか。あるいは行き着けのショップなどでミッションを降ろし、ミッション単体での修理も行ってくれるのか。ユーザー側の負担を考えれば、ミッション単体で送り修理してもらった方がありがたいだろう。トータルのコストはかからないし、さらにミッション修理の間に何か他の作業も可能になるからだ。

しかし、修理を実施する側からみれば車両状態で送られて来た方が作業性は良い。修理したミッションの動作確認やクラッチの合わせ込みなどは、車載で行えば確実だし簡単だ。またミッション単体での輸送時のオイル充填の問題もあるだろう。このあたりは現在、検討中とのことらしい。


いずれにしても、ミッションの修理に日産が動いてくれたことは歓迎すべき展開といえるだろう。水野氏は「日本市場でうまく軌道にのれば、ゆくゆくは海外ユーザーに対しても同様の展開をはかっていきたい」と語っていた。