2009年1月、NISMOが発売したパーツの中に非常に気になるアイテムがあった。「サーキットリンクセットPro.Ⅱ」というのがそれだが、特にこのセットに含まれるパフォーマンスダンパーというニューアイテムに興味をそそられた。そこで、今回はパフォーマンスダンパーとは何ぞや、その効果の程はどれほどのものなのか。NISMOのR32 GT-Rでパフォーマンスダンパー有・無の比較試乗を行った。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net / Nismo

















逆転の発想
パフォーマンスダンパーとは、ヤマハが開発した新たなボディ・チューニングパーツだ。その独特の発想はこれまでのボディ・チューニングの考え方とは大きくことなるものといえる。

従来、ボディのチューニングといえば、とにかく固める方向であった。つまり、ボディ剛性は高ければ高いほど良いという発想から、タワーバーや様々な補強アイテムが開発され、ご存知のようにアフターマーケット市場に溢れている。
もちろん、走りを良くするためにはこの発想は現在も主流であり、レースカーなどを開発する場合は、ボディを限りなく剛体に近づける。溶接タイプの複雑なロールケージを組み込んだり、溶接補強やスポット溶接増しなどでボディ剛性を大きく高めているのはこのためである。
しかし、一般公道を走るロードカーともなれば、なによりも日常性や快適性は損ないたくないし、ボディ・チューニングにかけるコストもできるだけ抑えたいもの。レースカーのような複雑で高額な補強は現実的ではない。そこで、前述のようなボルトオンタイプの補強アイテムで、ボディを剛体に近づけようとするわけだが、残念ながらそこには限界がある。

そこで、ヤマハの技術者たちは発想の転換を行った。
「ロードカーのボディは完全な剛体にはできず、バネ定数を持った弾性体である」
これが、パフォーマンスダンパー開発のキッカケである。

柔能く、剛を制す
現代のクルマは、スチール鋼鈑で構成されたモノコックボディが主流。簡単に言えば、鉄板で作られたハコなわけだ。このハコのある一箇所にハンマーなどで衝撃を加えるとハコ全体が振動する。釣鐘を叩いた時のような状態を想像していただければ分かりやすいだろう。ゴーンと鐘は鳴り、しばらくは振動が続く。
パフォーマンスダンパーはこの振動を吸収させる機能を持ったパーツなのである。その構造はシンプルで、従来のタワーバーに超微低速で高い減衰力を発生するダンパーを組み込んだようなもの。このパフォーマンスダンパーを釣鐘の開口部に装着すると振動は瞬時に収まり、ゴンという乾いた音になるわけだ。
しかし、クルマのボディは、釣鐘のように単純な形状ではない。ボディの何処にパフォーマンスダンパーを装着し、どれくらいの減衰力を持たせるかが問題となるのだ。

一方、NISMOはより上質な乗り味が得られるパフォーマンスダンパーに注目していた。2007年に登場したコンプリートカーFairlady Z Virsion NISMOには、初めてパフォーマンスダンパーを採用。その効果は、既に確認済み。そしていよいよ第二世代GT-R用パフォーマンスダンパーの開発に着手したのである。

見た目以上に酷使されたボディ
試乗したのは、NISMOのデモカーであるR32GT-R。1994年式のVスペックⅡは、既にその生産から15年が経過しているものの、内外装は綺麗に保たれ、NISMOの手厚いメンテを受けていることを実感する。
試乗前に、このR32の概要を説明しよう。まず、エンジンは約400馬力を絞り出すS1エンジンが搭載されている。R34GT-R用タービンにカムシャフトが交換され、中低速から高回転域まで使える優れたストリート用エンジンだ。サスペンションは、スタビ、スプリング、ダンパーをセットにしたS-tuneサスペンションシステムを装着。ただし、ダンパーは車高調整機能が追加されたS-tune HAだ。またボディ側では前後のタワーバーの他、アンダーフロア補強バーが装着されている。タイヤは235/40-18サイズのPOTENZA RE01Rをチョイス。NISMOが推奨するR32 GT-Rの定番メニューといったところだ。

さて、まずはパフォーマンスダンパー無しの状態で試乗。一見、程度が良さそうに見えるNISMOのR32 GT-Rだが、オドメーターは9万km以上の走行を示している。デモカーとしての9万kmの歴史は厳しいものだったに違いなく、パーツのテストや試乗会そして各種イベント時のデモランなど、プロドライバーが酷使する走行が大半だっただけに、ボディのヘタリは見た目以上の印象だった。走り出せばスグにわかるのが内装類のキシミや、直進時のステアリングの落ち着きの無さ。15年が経過し、9万kmをハードに酷使されたR32 GT-Rならば、こんなイメージなのかもしれない。それでも、NISMOによるブッシュ類やサスペンション、アライメントなどのキッチリとしたメンテで、まだマシな部類なのかもしれない。

パフォーマンスダンパーはノイズフィルターか
続いてパフォーマンスダンパーを装着。R32 GT-Rの場合は、フロントとリヤに1本づつ計2本のパフォーマンスダンパーを装着する。フロントは、ラジエター下部に左右のフレームを繋ぐように装着。リヤはタワーバーに並列に装着する。これだけ?という印象だったが、NISMOによれば十分な効果が得られるというのだ。
その第一印象は、静かになったというイメージだ。特に、片輪がマンホールに乗った場合や、首都高などの継ぎ目を乗り越えた際の車内に響く音が、ガーンというものからボコッというものに変わった印象だ。また、ステアリングのスワリ感も良くなっている。特に、ワダチの深い路面で車線変更するような場合でも、ステアリングをとられるようなことが無くなったから不思議だ。
つまり、ボディが新しくなったような感覚で、雑味がなくなり上質感が向上したというべきか。この感じは、例えばノイズの多い波形のグラフに、フィルターをかけることで本来の波形が見えてきたような印象である。

パフォーマンスダンパーは、新しいボディ・チューニングの方向性を提案しているアイテムだ。ワンランク上の上質感を求める向きにはお奨めのチューニングパーツといえるだろう。第二世代GT-Rのオーナー諸氏にとってはありがたいパーツの登場だ。

ところで、GT-R以外の車種のオーナーも気になるパーツではないだろうか。特に1BOXやワゴン系などで試してみたいパーツだ。大森ファクトリーでは、個別の相談にも応じてくれるとのことだから、一度、相談して見てはいかがだろうか。

NISMO大森ファクトリー
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NISMOパフォーマンスダンパー紹介記事
http://www.gtr-world.com/news/nismo/20090106-nismo-circuit-link-set-pro2.html


YouTubeにパフォーマンスダンパーの効果をわかりやすく紹介している映像がある。
下記のリンクから、4つのパターンの映像をチェックしてみて欲しい。
http://www.youtube.com/watch?v=mwcXbZ3knvs&feature=channel