FSWや筑波などのサーキットやストリートでの実走テストを重ねてきたMCRの赤いR35GT-R。小林代表のこだわりのパーツを搭載したこのデモカーをワインディングで試乗する機会を得た。

Text:GTR-WORLD.net
Photo: GTR-WORLD.net







MCRパドルシステム完成
「なぜ、パドルがステアリングと一緒に回らないのか?」。MCRの小林代表は、自分のR35GT-Rが納車された日から、そう疑問に思っていたという。そして試行錯誤の末、完成したのがMCRオリジナルのパドルシステムだ。

ノーマルのパドルシフトは、ステアリングホイールと一緒に回らず、ステアリングコラムに固定されている。そのため、回り込んだコーナーの途中でシフト操作しにくい場合がある。つまりステアリングを切った状態でシフト操作をしようとすると、指先が空振りするのだ。すると、一瞬、頭で考えた後にステアリングホイールから手を離してシフト操作をしなければならない。その点、MCRオリジナルのパドルシステムは、F1マシンやBMW M3(E46)のSMG-Ⅱと同じく、ステアリングと一緒に回るのだ。

 操作した第一印象は、全く違和感がない。パドルレバーの位置や高さ。ストロークはノーマルと変わらないようで、自然な感じだ。何よりもステアリングを90度近く回した状態でも、シフト操作が自然にできる点がありがたい。このため、両手は常に9時15分、あるいは10時10分の位置でステアリング操作に集中できる。小林代表は、「FSWならヘアピンや、最終コーナー、筑波ならダンロップ先の80Rでコーナリング中にシフトアップするんだけど、こういうコーナーで手の位置を動かしたくないんですよね」と言う。今回のMCRのオリジナルパドルシフターは、まさにそういったシーンで効果を発揮するアイテムであることは間違いない。

 また、ノーマルのステアリングホイールをはずしてしまうことで、便利機能であるオートクルーズや、携帯電話の機能が失われてしまうと思いきや、しっかりとこの2つの機能は別スイッチにして生かしているあたりはさすがだ。さらに、使用するステアリングホイールに合わせて、シフトレバーの位置を調整できる。




ワインディング・インプレッション

テーマは日常性と速さの融合




 MCRと言えば、走り系のチューニングショップのイメージがある。タイムを突き詰めるために、徹底した軽量化を施し、ロールケージを張り巡らした競技車両のようなデモカーをイメージしていたが、実はそうではない。日常性を損なうことなくサーキットでもトップタイムを狙えるクルマ造りに変化していた。今回のGT-Rも、エアコンやオーディオといった快適装備はそのままに、速さを追求している。ただし、現在のところ、MCRのデモカーのエンジンはノーマルだ。小林代表は「エンジンはノーマルのままで、サスペンションやブレーキを突き詰めることで何処まで速くできるかをテーマにしている」と言う。

MCRオリジナルの車高調整式サスペンションは、エンドレスのファンクションジールをベースにしたシングルチューブ式ダンパーを採用。スプリングはフロント14kg、リア12kgというもの。この数値からは、かなりハードな乗り味を想像したが、その期待は見事に裏切られた。乗り心地は、ノーマルよりもはるかに良く、スムーズに動くサスペンションに仕上がっている。この状態で、筑波サーキットを1分フラットで走るというから驚きだ。

この日は、横浜タイヤ製DNA S driveを装着していた。R35GT-Rに装着できる数少ないタイヤだが、エコ指向のコンセプトは残念ながらGT-Rとのマッチングは今ひとつ。サイドウォールの剛性が不足しているよう感じた。例えて言うなら、スタッドレスタイヤでワインディングロードを走っているような印象と言えば判りやすいだろうか。実は、このタイヤのせいで乗り心地が良いのかとも思ったのだが、小林代表によれば純正のランフラットに交換しても基本的には同じ乗り心地であるとのこと。肝心のコーナリング性能については、今回、評価はできなかったが、全体的なバランスは悪くないようで、ワインディングロードをそこそこのペースで楽しむことができた。機会があれば、純正タイヤでも走ってみたいと思った。帰路、高速道路と一般道を走ったのだが、やはり乗り心地の良さが光っていた。高速道路の路面がうねっているような所では、純正サスペンションは胃袋を上下にゆすられるような感覚があるが、このサスペンションにはない。キャビンは常にフラットに保たれ、ギャップを通過する際の当りも柔らかい。快適な高速クルージングが可能なのだ。



リップスポイラーの下面にはプロテクターが。こんなところにもMCRの細かな配慮がうかがえる
エンドレスのモノブロックブレーキは?
MCRのデモカーには、エンドレス製のモノブロックキャリパーが搭載されていた。このブレーキシステムは、開発テストを兼ねてエンドレスのGT300マシンにも装着されていたというから、今回のようなワインディングを少々ハイペースで走った程度ではへこたれることは全くない。純正ブレンボも良く効くブレーキだと思ったが、これはそれよりもさらに良く効く。未知のコースやサーキットを走る際には、頼もしい味方となってくれることは間違いない。ただし、メタル系パッド特有の音はなかなかに盛大。こればかりは、性能とのトレードオフだから仕方がないだろう。

さて、MCRのR35GT-R。総じて日常性と速さが相当に高い次元で融合されていることを実感した。なにしろ、あの乗り心地の良さで筑波サーキット1分フラットの実力。しかも、エンジンはノーマルなのだから。
MCRのデモカーは、いつ見てもとにかくきれい。ドアを開ける際にどうしても手の跡がついてしまうが、それすら申し訳ない程、きれいに保たれている。コックピットに座れば、小林代表のキメの細かいクルマ造りがヒシヒシと伝わってくるのだ。聞けば、お客さまのクルマを扱う際にも、汚れがつかないように常に気をつかっているとか。こんなところにも、妥協のないパーツやクルマ造りに対する姿勢がうかがえる。

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