昨年9月に発売された、NISMOクラブスポーツパッケージ。総額546万円という価格もさることながら、メーカー保証もそのまま継続されるという、これまでのアフターマーケットパーツにはない試みとして注目された。本来、サーキット走行を楽しむためのパーツ群として開発されたNISMOクラブスポーツパッケージだが、開発陣によれば意外にも乗り心地も良いという。
そこで、今回は市街地での乗り心地も含め、NISMOクラブスポーツパッケージのサーキットインプレッションをお届けしよう。

Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: GTR-World.net / Nismo





◆ NISMOクラブスポーツパッケージとは?
NISMOが、R35 GT-Rの走りをサーキットでより積極的に楽しむために開発したパーツキットである。狙いは、もちろんサーキットにおけるスポーツ走行を楽しむことに置かれているが、サーキットまでの移動区間も考慮に入れたというだけに、最低限の快適性は確保されている。
判りにくいのが、今年発売されたスペックVとの関係だろう。NISMOクラブスポーツの位置づけは、スペックVと基準車の間を補完する役目を担っている。基準車は、マルチパフォーマンススーパーカーとして、あらゆる路面状況や天候に対応し日常性も有している。一方のスペックVは完全にサーキット走行に特化したクルマで、2シーターでもあることから日常性は高いとは言いがたい。そこで、両者の中間に位置するNISMOクラブスポーツパッケージの存在意義が見えてくる。大人4人が乗れる日常性も有しつつ、サーキットでGT-Rのポテンシャルを楽しむことができるというわけだ。
ただし、前者の2台はGT-Rの1グレードとして存在し、クルマとして購入が可能だ。一方のNISMOクラブスポーツはパーツ群でありクルマとして販売はされていない。しかしながらNISMOは、クルマとして開発するような意識で作業を進めたという。その一つのあらわれが、日産自動車の保証をそのまま継続可能なパーツという点にあるだろう。パーツを組み込んだクルマ全体として、様々な実験や安全確認が行われたからこそ保証の継続が可能となったのである。もちろん、この背景には日産自動車との強力なコラボレーション体制があったことも事実だ。それだけに、安心して使えるパーツと言うことができるだろう。

NISMOクラブスポーツパッケージには、以下の構成の全てが含まれる。
├ シャシーパッケージ(専用サスペンション、専用タイヤ、専用ホイール*、取り付け/セットアップ込み)※パッケージ販売のみ
├ カーボンバケットシート*(左右セット、取り付け込み)※単品販売あり(左右セット販売のみ)
└ チタンエキゾーストシステム*(専用リヤディフューザー付き、取り付け込み)※単品販売あり(システム販売のみ)

これが総額546万円の内訳だが、これには部品代のほか取り付けやセットアップ工賃も含まれている。個別に代表的なアイテムをチェックして見ると、専用タイヤについては、純正と同じブリヂストン製POTENZA070Rながら、トレッド面のデザインや構造、コンパウンド、さらにサイド剛性まで見直されたコダワリようだ。またスプリングレートもフロント18.5k、リヤ9.6kとかなりハイレートなものになっている。ダンパーは純正と同じくビルシュタイン製で、3モードの切り替え機能付という点も同じだ。減衰力は、Rモードの値のみ変更され、他は純正と同じである。チタンマフラーについても、冷却面での苦心が見られ、マフラーとしては異例の冷却フィン付の凝った仕様となっている。
そして、フルキットまでは必要ないというオーナー向けには、シャシーパッケージ(220.5万円)、カーボンバケットシート(189万円)、チタンエキゾーストシステム(189万円)が用意されているのである。
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◆ 市街地インプレッション
サーキット走行時の接地性を高めたことにより、結果的に市街地での乗り心地も良くなった。とはNISMO開発陣の言葉だ。その言葉を確認するため、まずは市街地におけるインプレッションからはじめた。試乗したのは、愛知県にあるスパ西浦モーターパーク周辺の一般路だ。試乗車は、09モデルにNISMOクラブスポーツパッケージを装着した新車。まだ、ナラシを完了していないため、「サスペンションを含めて、各部の動きはまだシブイですよ」とNISMOスタッフ。ショックアブソーバーのポジションは、あえてコンフォートモードは使わず、標準モードで走ってみることにした。
まずはサーキット前の海沿い道を軽く流してみると、スグにフラットな乗り心地であることがわかる。初期ロットの07モデルだと、路面の凹凸にたいしてキャビンがヒョコヒョコと動くイメージがあるのだが、NISMO仕様にはないのである。スプリングレートを変更したことにより前後のバランスが取れたことと、スプリングと減衰力の相性もこちらの方が良いのかもしれない。普通の路面であれば、まったく違和感のない乗り後地であろう。ただ、西浦温泉街の石畳路面を走ると、サスガにスプリングの硬さを感じる乗り心地となる。とはいえ、かつての車高調整式サスキットのような硬さではなく、あくまで「硬めのアシだな」という印象。ちなみに、助手席に妙齢の女性を乗せての試乗であったが、クレームはつかなかったから、許容レベルの乗り心地と言えるだろう。
一方、ワインディングを流してみると、クルマの動きが自然なことに驚く。07モデルの基準車の場合、我々一般ドライバーにとってはシャープすぎるのかもしれない。例えば、大き目のコーナーを普通に走るような時でも、ステアリングをきった瞬間にドライバーの予想以上の早さでクルマがシャープに反応する。このため、修正舵が必要となったり、ステアリングを通して感じる接地感が希薄に感じたりする。したがって、緊張感を強いられることになるわけだ。
その点、NISMO仕様は特にステアリングの中立付近が良い意味でダルであり、我々の予想通りのタイミングでクルマが反応してくれる。つまり、一般ドライバーの感性に忠実なクルマとなり、ワインディグをリラックスして楽しむことができるのだ。
さて、サーキット走行をターゲットに開発されたNISMOクラブスポーツパッケージだが、意外にもデイリーユースにもピッタリという印象だった。むしろ、GT-Rの良さを市街地でも引き出していると言えるだろう。フルパッケージまではいかずとも、シャシーパッケージはお奨めかもしれない。






◆ サーキットインプレッション
――ハチロクのように乗りやすい――
これが、サーキットでNISMOクラブスポーツパッケージを試した第一印象である。ハチロクとは、少しお大げさではないかと思われるかもしれないが、それくらいよく曲がりコントローラブルで車重を感じさせないのだ。(ちなみに、サーキット試乗では、VDCはオフ、ミッションはマニュアル、そしてダンパーはRモードで走行した)

以前、07モデルの基準車に乗った時は、クルマの限界が突然やってくるような印象を受けた。特に、リヤの滑り出しの感覚が掴みにくいために、前記のような印象となったわけだが、NISMOクラブスポーツは、限界付近で滑り出す直前に、「そろそろ滑りますよ」とクルマの方から語りかけてくるのである。もちろん、その限界が低次元なものではなく、相当高いレベルにあるのだが、滑り出しの感覚が掴みやすい上に、動きもマイルドなためにドライバーとしては安心して走れるわけだ。
実際、コントロールのし易さは特筆に値するだろう。ブレーキを残しリヤを滑らせ気味にコーナー入ることもたやすいし、あるいはアクセル操作でクルマの向きを変えることもできる。要は、どんな状況でもドライバーの意思どおりにコントロールできるセットアップなのである。加えて、身のこなしも軽く1.7tの車両重量を感じさせないのだから、この辺りの感覚がまさにハチロクに初めて乗った時の印象に近いのだ。

NISMOクラブスポーツパッケージを総評すると、「乗りやすい」の一言につきると思う。何よりも、クルマの側からドライバーに語りかけてくれる点がいい。この結果、市街地ではリラックスしてドライブが可能で、サーキットではコントローラブルな走りが楽しめるのだ。乗り心地も許容レベルにあるだろう。
結論としては、シャシーパッケージはありかもしれない。ただ、惜しむらくは、もうあと20mmほどの車高ダウンとよりリーズナブルな価格設定だろうか。とはいえ、メーカー保証が継続可能な点や商品としての安心感を踏まえれば、所詮は無いものねだりな注文なのかもしれない。
ところで、この日は、多くのR35 GT-RオーナーもNISMOのデモカーに試乗した。試乗を終えたオーナー諸氏は、一様にNISMOパッケージの「曲がりやすさ」「乗りやすさ」に驚いていた点が印象的だった。それだけ、ノーマルと比べると乗りやすくなっていることの証であろう。


<NISMOとオーナーズクラブのコラボレーションイベント>
2月28日、試乗で訪れたスパ西浦モーターパークでは、NISMOとR35 GT-RのオーナーズクラブであるR35GTR clubとのコラボレーションイベントが行われていた。
簡単に言えば、ドライビングレッスンと走行会がミックスしたような内容で、午前中はサーキット走行時の注意点などを中心にした座学と先導車付の完熟走行。そしてメインストレートを利用したフルブレーキング体験を行った。講師は、現役GTドライバーでもある田中哲也選手と藤井誠暢選手という豪華な顔ぶれ。そして午後はフリー走行となり、田中選手や藤井選手の同乗走行も行われ、プロのドラテクを研究するにはまたとないチャンスとなっていた。この間、NISMOクラブスポーツパッケージの試乗も行われ、参加者にとっては充分に満足できる内容であったのではないだろうか。
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