4月初旬、岡山の迷チューナーこと、サンラインレーシングが関東に遠征してきた。
彼らの地元、岡山国際サーキットにおけるテストでは、かなりの手ごたえを感じた模様だ。
その成果を、いよいよ関東の主要サーキットで確認しようということらしい。

現在、R35 GT-Rのチューニングは、メニュー的にもタイム的にも、横並びに近い状態と言えるだろう。その理由のひとつには、第2世代GT-Rのときのようなハードなエンジンチューニングが施されていない点にある。今のところ、吸排気系のチューニングとブーストアップ程度が主流だ。さらに、タイムアップに最も貢献するタイヤも現在のところは1種類しかない。ご存知のように装着可能なセミスリックタイヤは存在せず、純正のダンロップタイヤを各社採用している状況だ。
このため、ラップタイムも大きな差がついていない。筑波サーキットなら1分00秒前後、富士スピードウェイなら1分50秒前後に各チューニングショップのベストラップが集中していると言えよう。

タイヤがワンメークで車両重量が同じならば、基本的には限界のコーナリングスピードは同じになるはずである。現在のところ、極端な軽量化を施したマシンは見当たらないことから、各車、コーナーのスピードは差がないことになる。もちろん、サスペンション等が、キチンと煮詰められていることが大前提の上での話し。

となれば、コーナーとコーナーの間のつなぎ区間をいかに速く駆け抜けるかがタイムアップの鍵となる。その一般的な手法としては、エンジンのピックアップを良くする、ギヤ比の見直しをはかる、トラクションを向上させるという3つが考えられる。

エンジンについては、カムの変更や、特性違いのターボ装着、排気量アップなどの手法がお馴染みだが、R35は、そこまで行っていない。ブーストアップが主流なだけに、ピックアップの向上に大きく貢献することはないために、タイム的な差が生じにくい。ただし、富士のようにストレートが長いサーキットではトップスピードに差は生じてくるであろう。

ギヤ比の変更に関しては、サスガに部品がない。特殊なミッションだけに、部品が登場するまでには、まだ時間が必要だろう。加えて、制御面での検証や対策も必要になることが予想される。

トラクションの向上については、GT-Rの場合2種類のアプローチがある。一つは4WDシステムのソフト的な変更だ。第2世代GT-Rの時に行われていたように、E-TSの駆動配分をより4WD的にする手法だ。しかしながらR35の場合、この制御系の解析は困難を極めており、将来的にもパーツが開発される可能性は極めて低い。
もう一つの手法が、前後のデフに強化LSDを装着する手だ。

そこで、サンラインレーシングが目をつけたのが、この強化LSDの装着だ。R35に標準装着されているリヤLSDは、多板式の一般的な機械式。ただ、非常にマイルドな味付けなのか、アクセル・オン時のロック率は低い設定となっている逆1.5WAYともいうべきタイプ。

サンラインレーシングが試作したリヤLSDは、カム各35°/35°の2WAYタイプ。
佐藤社長によれば、強化LSDの装着により操縦特性は大幅に変わったとのこと。具体的には、よりFR的な車両挙動となったらしい。そこで、サンラインレーシングでは、サスペンションのセットアップを見直し、強化LSDとのマッチングをはかった。この結果、岡山国際サーキットで、2秒以上のタイムアップが可能となったとのこと。開発ドライバーを努める菊地 靖選手もトラクションの向上を体感し、非常にコントローラブルになったと満足しているそうだ。そこで、今回、関東の主要サーキットでその実力を確認しにきたというわけだ。

GTウィングが目を引くサンラインレーシングのR35 GT-Rをご紹介しよう。
エンジンの基本はノーマル。吸気系はHKSパーツで固められ、排気系はオリジナルのエキゾーストシステムが装着されている。ブースト圧は、ピーク時で1.3kに設定。ECUは海外で注目されているアクセスポートを使用している。
サスペンションはオリジナルの車高調整式キットで、スプリングレートはフロント18k/リヤ16kの設定だ。注目はフロントのキャンバー角で、3°近い設定となっている。
タイヤは前後ともに同サイズ。リヤ用の285/35-20をフロントにも装着。特殊なオフセットのホイールと多めのキャンバー角がそれを可能としている。

4月9日正午。筑波サーキットにサンラインレーシングの赤いGT-Rが現れた。アタックドライバーは菊地 靖。天候は晴れ、気温28度℃、路面温度51℃。これだけ暖かいと好タイムは期待できないだろう。佐藤社長の表情も天候とはうらはらに曇りがちだ。
それでも、ドライバーの菊地 靖は果敢にコースに飛び出していった。1周のウォームラップの後にピットに戻り、各部のチェック。再び、コースに戻りセットアップの確認に入った。ダンパーの減衰力などを筑波のコースに修正、タイヤを新品にしてアタック開始だ。
ベストラップは0秒131。1分切りには、今一歩届かなかったものの、この気温条件ではまずまずの結果といえるだろう。ただし、ドライバーからはバックストレートでブーストがたれて車速が伸びないという指摘が。実は、サンラインレーシングのマシンには強化アクチュエーターが装着されていないのだ。走行終了後、佐藤社長の悔しそうにHKS製の強化アクチュエーターを見つめる姿が印象的だった。
とはいえ、トラクション性能の高さは実証できたタイムではないだろうか。仮に、強化アクチュエーターを装着していれば、59秒台も可能だろうとは佐藤社長の言葉。

翌4月10日、富士スピードウェイをアタックした。
この日は、占有ではなくスポーツ走行。走行台数も多く、アタック条件としてはあまり良くはない。ドライバーは昨日に続き菊地 靖。スプリングを含めて富士用のセットアップに変更しアタック開始。
数度のアタックの後に出したベストラップは1分50秒095。
ここでも、49秒台まであと一歩というところであった。しかし、佐藤社長は「49秒台は見えた!」と胸をはる。

一方、ドライバーの菊地 靖は、リヤに装着した強化LSDの効果を次のように語る。
「リヤLSDを強化すると、かなりFR的な走りになる。だからサスペンションのセットアップは見直す必要がある。でもその効果は大きい。トラクション性能は高くなり、イメージ的にはR34なんかの走りに近くなるよね。あー、これがGT-Rの走りだよねって感じかな。特に、高速コーナーでの安定感がいい。富士だと100Rなんかは凄く楽に走れるようになる。LSDを強化していないGT-Rは、後ろから見ていても苦労してるなと感じるよ。こっちは楽に走っているんだけどね」

トラクション性能を重視したサンラインレーシングのR35 GT-Rチューニング。新しい方向性を占う上でも今後が目を離せないだろう。この冬までに、どのように進化しているか、楽しみな1台ではないだろうか。

◆サンラインレーシング
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