ブーストアップで730ps!最大トルクは90kg前後!!
驚くべき計測結果である。

700psオーバーと言えば、第二世代GT-Rの感覚ならハードチューニングを施したRB26DETTの数値。タービン交換はもちろん、最低でもカムシャフトやバルブスプリング、ヘッドガスケット、さらには吸排気系のチューニングが必要だ。場合によってはピストンやコンロッド等のエンジン主要部品の交換まで必要とされるような数値だった。

ところが、スペックVは、ブーストアップでこの数値を達成してしまう。
もちろん、吸気系の配管類はアルミパイプなどに交換し、スポーツ触媒を含む排気系もチューニング。燃料系ではポンプとインジェクターの交換程度である。ちょっと前の感覚なら、最も一般的なチューニングのレベルで、400ps~450psくらいのR32 GT-Rのイメージだろう。そんなライトな感覚のチューニングでも、R35 GT-R スペックVは700psオーバーが可能なのだ。

このスペックVを手がけているのは、埼玉にあるHKSのアンテナショップ「HKSテクニカルファクトリー」。
今回のスペックVには、HKS本体がR35 GT-R用に販売しているGT570キットを組み込んでいる。さらに燃料の供給不足を補うためにGT600キット用の燃料ポンプと830ccの大容量インジェクター(ノーマルは600cc)に交換し、独自のコンピュータセッティングを行っている。現在は、開発の最終段階である中間領域での煮詰めを行っているところ。ちなみに、スペックVの独自機能である「ハイギヤードブースト」は作動しないようになっている。


さて、スペックVがブーストアップで高出力を得られる要因は、下表のターボスペック表から読み取れる。日産から正式なコメントはなかったが、HKSが独自に計測したこの表によると、スペックVのターボは、基準車のそれに較べると、明らかに高出力用のターボと言うことができる。例えて言うなら、R32 GT-Rにおける基準車用セラミックターボとNISMO用メタルターボの違いに近いイメージだ。つまり、スペックVはハイブーストにした時に本領を発揮するターボを持っているのである。

日産が何を狙ってスペックVのターボを高出力対応にしたのかは不明。しかし、仮にスーパー耐久レース参戦を前提とするならば、このターボの採用は理解できるものとなる。つまり、かつてのN1ターボのような位置付けだ。
実際、スペックVのデビュー直後にあるメディアが筑波サーキットでのタイム計測を行ったが、期待されたほどのタイムが記録できなかった点も、このターボのスペックを見れば理解できるというものだ。485ps程度のブースト圧では本領を発揮できなかったということではないだろうか。

今回チューニングを担当したHKSテクニカルファクトリーの菊池良雅代表は、「ブースト1.3kぐらいまでは基準車と変わらない感じです。むしろ中低速では劣るぐらいかもしれませんね。しかし、1.3k以上のブーストにすると豹変します。今回最大ブースト1.5kで約730psを計測しましたが、安定状態でも1.4kのブースト圧を保っていますから、かなり容量のあるターボといえるでしょうね」と語っている。菊池代表によれば、基準車では600ps前後がターボの限界ということだから、その差は100ps。これは大きい。「スペックVは、ハイブーストにしないと本領発揮しないクルマですね。まさにチューニングベース車でしょう」と菊池代表は語る。

◆ターボスペック比較表
基準車 スペックV HKS-TF
COMP トリム 60T 60T 64T
IN(mm) 43.4 46.5 46.5
OUT(mm) 56 60 60
羽枚数 12 12 12
EXH トリム 57T 82T 57T
IN(mm) 53 53 53
OUT(mm) 39.8 48 39.8
羽枚数 9 11 9+カットバック


となれば、スペックVのターボを流用したくなる基準車オーナーも多いはず。しかし、このターボは1基100万円もするシロモノ。GT-Rはツインターボだからターボだけで200万円の出費を覚悟しなければならない。これはかつてのNISMOタービンやN1タービンのような訳にはいかない。そこで、HKSテクニカルファクトリーではオリジナルのターボを開発中だ。上の表のように、純正ターボよりも大きく、スペックVのものよりは若干小さいターボだ。同社では、このターボで650psから680psぐらいの最大出力を狙っているという。この秋から年末にかけてテストを行い製品化していくというから楽しみだ。


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